ー コミュニティ主宰者からのご相談 ー
「講師を育てているのに、想定外の質問が来ると全部わたしに聞いてきます。
自分で考えられる講師の育て方はありますか?」

ー YELL’s大学 学長 吉野加容子より ー
想定外のことが起きた時こそ、「正解を知っているか」ではなく、「自分で問いを立て、必要な情報を探し、答えへ近づけるか」を育てるチャンスです。
「通常ケースはできるのに、想定外になると全部私に戻ってくる。」
基本の流れは教えた。
マニュアルも渡した。
普段の対応なら、一人でできるようになった。
ところが、少し違う質問が来ると、
「これはどう答えればいいですか?」
「こういう場合はどうしますか?」
「この人には何と伝えればいいですか?」
「一度先生に確認してもらえますか?」
と、また代表へ戻ってくる。
毎回答える側からすると、
「このくらいは自分で考えてほしい」
と思うかもしれません。
けれども、ここで確認したいのは、その講師が知っている「答えの数」ではありません。
答えを知らない問題に出会った時、どうやって答えを探すか。
その方法まで育っているでしょうか。
こんなお悩みはありませんか?
- 通常のケースなら対応できるのに、例外が出るとすぐ確認が来る。
- 生徒から少し違う質問をされただけで講師が止まる。
- マニュアルに書いていないことは全部代表判断になっている。
- 講師が「正しい答え」を当てようとしているように見える。
- 代表がいないと回答を保留してしまう。
- 講師によって回答の質に差がある。
- 経験のある講師でも、自分なりの見解を言わない。
- トラブルを恐れて確認回数が増えている。
- 講師を増やしたのに、自分への質問量が減らない。
- 最終的には、講師自身が次の講師を育てられるようになってほしい。
この記事でわかること
- 想定外の質問で講師が止まりやすい理由。
- マニュアルだけでは対応力が育ちにくい理由。
- 「正解を覚える」と「答えを探せる」の違い。
- YELL’s大学が大切にする「問いを立てる」という考え方。
- 情報を集めるだけではなく、比較・整理・言語化する意味。
- 代表へ聞く前に講師自身が考える習慣のつくり方。
- 想定外にも対応できる講師を育てる5ステップ。
先にこの記事の結論
想定外の質問に強い講師とは、すべての答えを暗記している人ではありません。
むしろ必要なのは、
何が分からないのかを言葉にする。
問いを立てる。
必要な情報を探す。
複数の情報を比べる。
自分なりの答えをつくる。
結果から次の判断基準を残す。
という「答えがない時の考え方」です。
講師育成で増やしたいのは、答えのストックだけではありません。
「知らない問題に出会っても、自分で答えへ近づける力」を育てること。
ここを目指すと、想定外の質問が「代表へ戻す問題」から「講師が育つ材料」へ変わっていきます。


なぜマニュアル通りならできるのに、想定外になると止まるのか?
講師育成では、まず知識や基本の流れを教える必要があります。
たとえば、
よくある質問への回答。
サービスの説明。
生徒への基本的な声かけ。
トラブル時の連絡方法。
講座の進め方。
こうした基本が揃えば、通常のケースには対応できるようになります。
ところが、現場では必ず例外が起こります。
いつもと違う悩みを持つ生徒。
複数の問題が重なった相談。
どのマニュアルにも当てはまらない質問。
その時、講師が持っているのが「覚えた答え」だけなら、使える答えが見つからなくなった瞬間に止まります。
だから講師育成では、「答えを教える」段階の次に、「答えを探す方法を育てる」段階が必要です。
YELL’sの考え方|研究とは「正解を出すこと」より「問いを立てること」
YELL’s大学では、「研究」について考える時、大切にしている捉え方があります。
「研究とは問題解決ではなく、問いかけと捉える」
正解を出さなければいけないと思うほど、人は手が止まりやすくなります。
「この質問の正解は何だろう?」
だけで考えると、知っている答えがなければ止まります。
一方で、
「なぜこの人はこう感じているんだろう?」
「いつもと何が違うんだろう?」
「どの部分までは分かっているんだろう?」
「似たケースはなかっただろうか?」
と問いを立てると、次に探す情報が見えてきます。
問いがあるから、探索が始まる。
この考え方は、講師育成にもそのまま置き換えられます。
講師へ「正解」を渡す前に「問い」を一つ渡してみる
たとえば講師から、
「こんな質問が来たのですが、どう答えたらいいですか?」
と相談されたとします。
代表がすぐ回答文をつくれば、その場は早く解決します。
けれども、毎回それを続けると、講師に残る経験は、
「分からなかったら代表へ聞く」
になりやすくなります。
そこで、答える前に一つ問いを返します。
「この人は、何に一番困っていると思う?」
「いつもの相談と何が違う?」
「今ある情報だけで、どこまで分かる?」
「似たケースは過去になかった?」
「あなたなら、まず何を確認する?」
代表の正解へ誘導するための問いではありません。
講師自身が、問題を分解して考え始めるための問いです。
「考える力」は、情報量だけを増やしても育ちにくい
想定外に対応できる人を育てようとすると、
「もっと勉強させよう」
「もっと資料を読ませよう」
と、情報量を増やしたくなることがあります。
もちろん、必要な知識は重要です。
一方で、YELL’s大学では、情報を集めるだけで研究は終わらないと考えます。
比較する。
分類する。
まとめる。
自分の言葉へ置き換える。
ここまで行うことで、知っている情報が、実際に使える判断材料へ変わっていきます。
「似た事例を探す→違いを比べる」が想定外への対応力を育てる
講師から想定外の相談が来た時、すぐ代表が答える代わりに、過去の記録を一緒に探す方法があります。
たとえば、
過去に似た相談をした生徒はいなかったか。
以前どんな対応をしたか。
今回との違いは何か。
その時、相手はどう変化したか。
うまくいかなかったケースはなかったか。
を確認します。
ここで重要なのは、過去の回答をそのままコピーすることではありません。
「前回と今回では何が違う?」
と比較することです。
違いが分かると、
「今回はこの部分を確認した方がよさそう」
「前回と同じ答えでは合わないかもしれない」
と、自分なりの仮説を持てるようになります。
Before|「代表に聞く」が最短ルートになっているチーム
講師が想定外の質問をすべて代表へ持ってくるチームでは、講師が怠けているとは限りません。
むしろ、チームの中で、
分からない。
↓
代表へ聞く。
↓
正解を教えてもらう。
↓
そのまま伝える。
というルートが、一番確実で、一番安全で、一番早い方法になっている可能性があります。
この状態で「もっと自分で考えて」と言っても、チームの仕組みそのものが変わっていなければ、行動は変わりにくくなります。
After|「答えを聞く」前に、自分の仮説を持って相談できる状態へ
目指したいのは、質問を禁止することではありません。
相談できることは、チームにとって大切です。
変えたいのは、相談の中身です。
たとえば、
「どうしたらいいですか?」
から、
「私はこう考えました。理由はこの二つです。ただ、この部分だけ判断に迷っています。」
へ。
この変化が起きると、代表との相談時間そのものが、答えを受け取る時間ではなく、判断精度を高める時間へ変わります。
自分で考える講師とは、何でも一人で決める人ではなく、自分の仮説を持った上で必要な相談ができる人です。
想定外にも対応できる講師を育てる5ステップ
生徒から来た質問を、そのまま代表へ転送するのではなく、一度講師自身に分解してもらいます。
この人は何に困っている?
何が一番知りたい?
どこまでは分かっている?
いつものケースと何が違う?
「答えは何?」の前に「何が問題?」を考える習慣をつくります。
問いが見えたら、答えるために必要な情報を探します。
過去の相談記録。
講座資料。
お客様の声。
これまでの対応例。
チーム内の判断記録。
代表の頭の中だけにある情報を、講師も探索できる状態へ変えていきます。
過去の事例を見つけたら、そのままコピーするのではなく、今回との違いを考えます。
相手の状況は同じ?
止まっている場所は同じ?
求めていることは同じ?
前回と違う条件は?
比較することで、「今回は何を変える必要があるか」が見えやすくなります。
代表への相談を禁止する必要はありません。
相談する前に、
「私はこう考えました」
「理由はこの二つです」
「ここまでは自分で判断できます」
「この部分だけ相談したいです」
まで言葉にしてもらいます。
相談が「答えをもらう時間」から「自分の判断を磨く時間」へ変わります。
無事に回答できたら終わりではありません。
何を見て考えた?
どの問いが役立った?
何を見落としていた?
実際の反応はどうだった?
次に似た質問が来たら何を見る?
を残します。
一人の想定外対応を、次の講師も使えるチームの知恵へ変えていきます。
講師が代表へ相談してはいけないわけではない
ここは誤解したくないポイントです。
自分で考える講師を育てることと、相談させないことは同じではありません。
専門的な判断。
大きなリスクがある対応。
お客様へ重大な影響が出る可能性があること。
会社として統一しなければならない判断。
こうした場面では、代表や責任者への相談が必要です。
育てたいのは、
「何でも一人で決める人」ではなく、「どこまで自分で考え、どこから相談するかを判断できる人」です。
講師育成で「想定外」をなくそうとしない
すべての質問を想定して、完璧なマニュアルをつくることは難しいものです。
人を相手にする仕事なら、想定外は必ず起こります。
だから、
「想定外が起きないチーム」
を目指すより、
「想定外が起きても、問いを立て、調べ、考え、必要な相談ができるチーム」
を目指す方が現実的です。
想定外の一件一件が、次の講師を育てる教材になります。
関連記事|自分で考えられるチームづくりを深掘りする
まとめ|想定外への対応力は「答えの数」ではなく「問いを立てる力」から育つ
講師へ知識を教える。
マニュアルを渡す。
よくある質問への答えも共有する。
それでも、想定外の質問が来ると代表へ戻ってくる。
そんな時は、「もっと覚えてもらう」だけではなく、
「答えがない時に、どう考えるか」まで育てられているかを確認してみてください。
YELL’s大学では、研究を「正解を出すこと」だけではなく、問いを立てることから始めます。
問いを立てる。
必要な情報を探す。
比べる。
整理する。
自分の言葉へ置き換える。
実際に試す。
そして、結果からまた発見する。
講師が「代表の答えを知っている人」から、「自分で答えへ近づける人」へ変われば、想定外は育成のチャンスになります。
代表へ聞くことをゼロにする必要はありません。
まずは、
「私はこう考えました。ここだけ相談したいです。」
と、自分の仮説を持って相談できる講師を一人増やすところから始めてみてください。


HEROコード診断の開発・監修
HEROコード診断は、YELL’s大学 学長 吉野加容子(学術博士 Ph.D.)が開発・監修しています。


大人の学び直しと行動の脳科学を専門とする研究者として、人が「分かっているのに動けない」「答えがないと止まってしまう」といった状態を、本人の能力不足だけで終わらせず、どこで止まり、何が考動のきっかけになるのかを研究・実践しています。
YELL’s大学では、HEROコード診断、ムーンショットアプローチ、マイプロデュースデザイン、考動、ヒーローログなどを通して、自分や人の現在地を見つけ、学び、考え、決断し、次の挑戦へ進める人材育成を行っています。
人材育成でも、正解を覚えさせるだけではなく、その人がどこで止まっているのかを見つけ、必要な問い・情報・挑戦を手渡しながら、自分で次の一手をつくれる状態を目指します。
監修:吉野加容子
YELL’s大学 学長
学術博士(Ph.D.)
HEROコード診断 開発・監修
「脳科学×教育×起業」で選択できる人生を歩み歩ませる人財教育プロデューサー
大人の学び直しと行動の脳科学を専門とする研究者
YELL’s大学 学長・吉野加容子について詳しく見る


想定外の質問に対応できる講師育成のFAQ
- Q1. 講師が想定外の質問をすぐ代表へ聞いてくるのは、経験不足だからですか?
-
経験不足が関係する場合もありますが、それだけとは限りません。確認したいのは、その講師が「答えを知らない時にどう考えるか」を学ぶ機会を持っているかです。通常の質問にはマニュアルや過去の回答を使えるため対応できます。ところが少し条件が変わると、どの情報を見ればいいか、何と比べればいいか、どこまで自分で判断していいかが分からなくなります。この時、代表へ聞けば毎回答えが返ってくる環境なら、代表へ聞くことが最も確実な方法になります。改善するには、質問を禁止するのではなく、相談前のプロセスを変えます。「相手は何に困っている?」「過去の似たケースは?」「今回との違いは?」「あなたはどう考えた?」まで整理してから相談してもらいます。最初から正しい仮説である必要はありません。自分で問いを立て、情報を探し、仮説を持つ経験を増やすことが重要です。経験年数だけが増えても、毎回答えを受け取る経験ばかりなら、想定外への対応力は育ちにくくなります。経験を「年数」ではなく「自分で考えた回数」として増やしていくことがポイントです。
- Q2. 講師から質問された時、代表はすぐ答えない方がいいのでしょうか?
-
すべての質問へ答えないようにする必要はありません。お客様へ重大な影響が出る可能性がある場面、安全や契約に関わること、会社として回答を統一すべき内容などは、責任者が明確に判断する必要があります。一方で、本人が考えられる問題まで毎回答えを渡していると、講師側には「分からない時は代表へ聞けばよい」という経験だけが残ります。そこで、答える前に一つだけ問いを返します。「あなたはどう考えた?」「この人は何に困っていると思う?」「似たケースはなかった?」などです。講師が材料を持っていないなら、考えさせ続けるのではなく、過去の事例や必要な資料を渡します。その上で、もう一度本人に考えてもらいます。重要なのは「答える・答えない」の二択ではありません。今この講師に必要なのが、知識なのか、問いなのか、判断経験なのかを見極めることです。最終的には、講師自身が「ここまでは自分で考えられる」「ここからは責任者へ相談する」と判断できる状態を目指します。
- Q3. マニュアルにない質問にも対応できる講師を育てるには、どんな研修が必要ですか?
-
知識を覚える研修だけではなく、実際のケースを使って考える練習を入れることが有効です。たとえば、過去に届いた相談を匿名化して一つ提示し、「この人は何に困っている?」「追加で何を聞きたい?」「似たケースは?」「あなたならどう答える?」と考えてもらいます。その後、実際に行った対応と比べ、「何が同じで何が違う?」を話します。ここで重要なのは、代表の正解を当てるゲームにしないことです。なぜその判断をしたのか、どの情報を見たのかを言葉にすることに価値があります。また、同じテーマでも条件を少し変えたケースを複数扱うと、「この条件ならこの答え」と丸暗記するのではなく、何が判断を変えるポイントなのかが見えやすくなります。YELL’s大学で大切にする、問いを立てる、情報を集める、比較する、自分の言葉へ置き換えるという流れは、こうしたケース研修にも活用できます。研修のゴールを「正答率」だけにせず、「自分の仮説を説明できる」状態に置いてみてください。
- Q4. 講師ごとに回答がバラバラになるのが怖いです。どこまで自由に考えさせていいですか?
-
自由に考えさせることと、チームとして何でも自由に回答してよいことは別です。まず、必ず揃える部分と、講師が考えてよい部分を分けます。たとえば、サービスの約束、守るべきルール、安全性、返金や契約に関わる判断などは統一する。一方、生徒への問いかけ方、説明の例、相手の状況に合わせたサポート方法などは、共通する考える軸の中で講師自身が工夫できるようにします。重要なのは、「この文章を言えば正解」という回答集だけではなく、「この場面では何を一番大切にするのか」という判断基準を共有することです。また、迷った場合の相談ラインも明確にします。「この条件なら必ず責任者へ」「ここまでは自分で判断してよい」と線を引くことで、講師側も安心して考えられます。自由度をいきなり100%にする必要はありません。経験に合わせて判断範囲を少しずつ広げ、実際の対応後に振り返りながら精度を高めていく方が、質を保ちながら自分で考えられる講師を育てやすくなります。
- Q5. 今日から「自分で考えられる講師」を育てるために一つ変えるなら何ですか?
-
今日から一つ変えるなら、講師から質問が来た時に「答えだけを返す」のではなく、「あなたの仮説も一緒に送ってください」というルールを加えてみてください。たとえば「①相手は何に困っていると思うか、②過去に似たケースはあったか、③自分ならどう対応するか、④どこだけ相談したいか」の4点を簡単に書いてもらいます。最初は「分かりません」という回答になることもあります。その場合は、考える材料が不足している可能性があります。必要な過去事例や資料を案内し、もう一度考えてもらいます。この方法の目的は、質問を減らして代表を楽にすることだけではありません。講師自身に「分からない→調べる→考える→相談する」という新しいルートをつくることです。そして、対応が終わった後に「何を発見した?」「次に同じ質問が来たらどうする?」まで記録します。その記録を他の講師も使える状態にすれば、一人の想定外対応がチーム全体の学びへ変わります。まずは一つの質問から、相談の質を変えてみてください。
「想定外が起きるたび、全部私に聞かれる」を変えたい主宰者へ
マニュアルを増やす。
回答例を増やす。
さらに細かく教える。
それだけでは、次の想定外が起きた時にまた同じ場所へ戻ることがあります。
そんな時は、
「この講師は、答えを知らない時にどうやって次の一手を見つけているだろう?」
を見直してみてください。
YELL’sでは、HEROコード診断を通して、一人ひとりの考動のアクセルとブレーキを見つけながら、自分で問いを立て、考え、必要な相談をし、次の一手へ進める人が育つチームづくりを研究しています。

































