ー コミュニティ主宰者からのご相談 ー
「右腕になってほしいスタッフがいるのですが、大事な場面になると結局わたしが出てしまいます。
どうしたら本当に任せられるようになりますか?」

ー YELL’s大学 学長 吉野加容子より ー
「任せられるようになったら任せる」だけでは、右腕候補が重要な場面を経験する機会そのものが増えません。
いきなり代表と同じ責任を渡すのではなく、小さな決断から本人が責任を持つ経験を増やすことから始めてみてください。
「この人を、次のリーダーに育てたい。」
そう思えるスタッフがいる。
普段の仕事は任せられる。
責任感もある。
メンバーからも頼られている。
ところが、
重要なお客様への対応。
大きな企画の判断。
スタッフ同士の問題。
想定外のトラブル。
チーム全体に関わる決断。
となった瞬間、心配になって自分が前へ出てしまう。
そして終わった後に、
「また私がやっちゃった。」
と思う。
右腕候補が育たない時、本人だけに原因があるとは限りません。
「重要な場面ほど代表が担当する」という経験設計になっていないか。
一度ここから見直してみましょう。
こんなお悩みはありませんか?
- 右腕候補はいるけれど、まだ完全には任せられない。
- 普段の仕事はできるのに、想定外のことが起きると止まる。
- 重要な判断だけは自分でしないと不安。
- 失敗された時の影響を考えると任せられない。
- 本人から「どうしたらいいですか?」と聞かれると答えてしまう。
- リーダー候補にもっと自信を持ってほしい。
- 自分と同じレベルで判断してほしいと思ってしまう。
- どこまで権限を渡せばいいのか分からない。
- 右腕候補が育つまで自分が頑張るしかないと思っている。
- 将来的には、自分以外にもチームを率いる人がほしい。
この記事でわかること
- 右腕候補がいるのに任せ切れない理由。
- 「できるようになったら任せる」では育ちにくい理由。
- 右腕と優秀なスタッフの違い。
- 重要な判断を小さく経験させる方法。
- 失敗をリーダー育成へ変える振り返り方。
- 代表の判断基準を次の人へ渡す方法。
- 本当に任せられるリーダーを育てる5ステップ。
先にこの記事の結論
右腕候補へ任せられない時、
「まだ能力が足りないから」
だけで考えないことが大切です。
なぜなら、リーダーとして必要になる力の中には、実際に責任を持って判断しなければ育ちにくいものがあるからです。
考える。
決める。
人へ伝える。
結果を引き受ける。
失敗から修正する。
もう一度決める。
こうした経験です。
「任せられる人になったら任せる」のではなく、「任せる経験の中で、任せられる人へ育てる」。
右腕育成では、この順番を意識してみてください。


右腕と「仕事ができるスタッフ」は同じではない
仕事が速い。
売上につながる仕事ができる。
指示したことを正確に実行できる。
こうしたスタッフは、とても心強い存在です。
ただし、それだけで次のリーダーになれるとは限りません。
右腕や次世代リーダーになると、正解が決まっていない場面にも向き合う必要があります。
誰を優先する?
何を守る?
どこまで任せる?
問題が起きた時にどうする?
メンバーへ何と伝える?
チームとしてどちらへ進む?
こうした問いに、自分なりの答えを出さなければなりません。
「代表から与えられた答えを実行する力」から、「答えのない場面で自分なりに決める力」へ。
右腕育成では、ここを橋渡ししていく必要があります。
重要な場面ほど代表が出ていたら、重要な経験は誰に残る?
代表が前へ出ること自体が悪いわけではありません。
大きな責任が伴う場面では、代表が判断すべきこともあります。
ここで考えたいのは、
「その経験から、右腕候補は何を学べたか?」
です。
たとえば代表が最終判断をするとしても、
まず本人に状況を整理してもらう。
本人案を出してもらう。
なぜその案なのか説明してもらう。
代表が判断する。
なぜその判断になったのか比較する。
最後に本人と振り返る。
ことはできます。
これなら最終責任を代表が持ちながら、本人にも判断経験を残せます。
「任せるか、自分がやるか」の二択にしないこと。
右腕候補が考える部分を少しずつ増やしていきます。
代表の「正解」を当てさせようとしていませんか?
右腕候補へ、
「あなたならどうする?」
と聞く。
本人が答える。
すると代表が、
「いや、私はこうするかな。」
と毎回答える。
これが続くと、本人にとって「自分で考える」は、
「代表が考えている正解を当てる」
に変わってしまうことがあります。
そこで、答えが違った時こそ、
なぜそう考えた?
何を一番大切にした?
どんなリスクを見た?
誰の未来を考えた?
他にはどんな選択肢がある?
と判断の過程を聞きます。
代表と同じ答えを出せることより、自分の判断を説明できること。
そこから育てていきます。
右腕候補に必要なのは「成功経験」だけではない
大切な人ほど、失敗させたくない。
そう思うことがあります。
けれどもリーダーになると、いつも正解を選べるわけではありません。
必要なのは、
決めた。
↓
うまくいかなかった。
↓
原因を考えた。
↓
人に相談した。
↓
修正した。
↓
もう一度進んだ。
という経験でもあります。
失敗しないリーダーをつくるのではなく、失敗した後に考動できるリーダーを育てる。
そのためには、失敗しても立て直せる範囲から責任を渡すことが大切です。
いたがきひまりさんの変化から見える「リーダーを育てる」ということ
このテーマを考えるヒントになるのが、ASDグレーゾーン専門家として活動し、ママのためのオンラインスクール「Nicotto講座」を主宰する、いたがきひまりさんの実践です。
ひまりさん自身も、チームを率いる中で、リーダーとして自分が背負うことの多い時期を経験してきました。
その中で見つけていったのが、
仲間を頼ること。
ひとりですべてを担おうとしないこと。
というリーダーのあり方でした。
そして、チームの体制やルール、コミュニケーション、相談や学びの環境などを見直しながら、メンバー自身が学び、考え、役割を担える環境づくりへ進んでいきました。
その先で大切になるのが、
「自分ができる人」を増やすだけではなく、「次の人へ経験を渡せる人」を育てること。
です。
右腕や次世代リーダーは、代表の仕事を代わりにこなす人だけではありません。
自分で考え、決め、周りの人の力も引き出しながら、チームの未来を一緒につくる人。
その経験を段階的につくっていくことが、リーダー育成につながります。
「任せられるリーダー」を育てる5ステップ
「もっと任せたい」だけでは、本人も何を目指せばいいのか分かりません。
日常業務?
スタッフからの相談?
企画の進行?
日常的な判断?
新人育成?
チームミーティング?
3年後、代表が担わなくてもよくしたいことを書き出します。
「右腕」という肩書きではなく、担ってほしい機能を具体的にします。
いきなり代表と同じ責任を渡しません。
たとえば企画責任者なら、
まず企画案を決める。
次に小さな予算を決める。
次にメンバーの役割を決める。
次に問題発生時の対応案を決める。
というように分けます。
任せる範囲を小さくすれば、本人にも代表にも挑戦できる余白が生まれます。
相談されたら、すぐ答える前に、
「あなたはどうしたい?」
「何を見てそう考えた?」
「他にはどんな案がある?」
「一番守りたいものは何?」
と聞きます。
その後に代表の判断と理由を共有します。
答えを渡す時間から、判断基準を比較して学ぶ時間へ変えていきます。
任せた結果がうまくいかなかった時、すぐ代表が仕事を取り戻しません。
何が起きた?
どこで判断が分かれた?
次は何を見る?
誰に相談する?
どう立て直す?
を一緒に振り返ります。
「失敗したから任せない」ではなく、「失敗から何を学べば次に任せられるか」を考えます。
本人が自分で判断できるようになったら、そこで終わりではありません。
一人のスタッフの相談役になる。
新人の振り返りを担当する。
自分の判断基準を次の人へ説明する。
小さなチームをまとめる。
という経験を渡します。
「自分でできる人」から、「人ができるようになるのを支えられる人」へ。
ここまで進むと、右腕候補は代表の補佐役から、次世代リーダーへ近づいていきます。
右腕候補を「代表のコピー」にしなくていい
右腕候補を育てていると、
「私ならもっとこうするのに。」
と思う場面が出てきます。
けれども、代表と右腕候補は違う人です。
人を巻き込むのが得意な人。
一人ひとりを見るのが得意な人。
数字を見るのが得意な人。
仕組みを整えるのが得意な人。
言葉にするのが得意な人。
それぞれ違います。
だから、
「私と同じようにできる?」
ではなく、
「この人の強みを使ったら、どんなリーダーになれる?」
という見方も大切です。
HEROコード診断でも、一人ひとりが動きやすくなるアクセルや、止まりやすくなるブレーキ、力を発揮しやすい役割を見ながら、その人自身の考動を育てていきます。
代表と同じリーダーをもう一人つくるのではなく、チームに必要な新しいリーダーを育てる。
そう考えると、候補者の見え方も変わってきます。
関連記事|右腕・次世代リーダーを育てたい方へ
いたがきひまりさんについて
ASDグレーゾーン専門家|いたがきひまり
ママのためのオンラインスクール「Nicotto講座」を主宰。自身の活動を広げるだけではなく、チームを率いるリーダーとして、仲間それぞれの得意を活かすチームづくりや、次の人へ経験を渡していく人材育成に取り組んできました。
「何でも自分でできるリーダー」ではなく、仲間を頼り、それぞれの力を活かしながら、人が人を育てられるチームを目指して、体制・コミュニケーション・相談や学びの環境などを見直し続けています。
Instagram|@itagaki_himari
まとめ|「任せられるようになったら」ではなく、任せながら育てる
右腕になってほしい人がいる。
けれども、重要な場面になると自分が出てしまう。
そんな時は、本人を見て、
「まだ任せられない。」
で終わらせる前に、もう一つ考えてみてください。
「この人が任せられるようになるための経験を、私は何まで渡している?」
です。
最初から大きな決断を任せる必要はありません。
本人案を出してもらう。
小さなことを決めてもらう。
結果まで担当してもらう。
失敗を振り返ってもらう。
次の人の相談に乗ってもらう。
一つずつ経験を増やします。
右腕は、代表の隣に長くいたから育つのではありません。自分で考え、決め、結果を受け止め、また次へ進む経験の中で育っていきます。
今日、右腕候補へ渡せる「一つの決断」を探してみてください。


HEROコード診断の開発・監修
HEROコード診断は、YELL’s大学 学長 吉野加容子が開発・監修しています。


HEROコード診断では、一人ひとりが考動しやすくなるアクセルと、止まりやすくなるブレーキを可視化しながら、その人自身の強みをどんな役割や挑戦で育てていくのかを考えていきます。
チームづくりでも、代表の正解を覚える人を増やすだけではなく、自分で学び、考え、決断し、動き、経験を次の人へ渡せる次世代リーダーが育つ環境づくりを目指します。
監修:吉野加容子(学術博士/脳科学・学習行動の専門家/YELL’s大学学長)
YELL’s大学 学長・吉野加容子について詳しく見る


右腕・次世代リーダー育成のFAQ
- Q1. 右腕候補へどこまで権限を渡せばいいのか分かりません。
-
最初から代表と同じ権限を渡す必要はありません。まず、任せたい仕事を「情報を集める」「案をつくる」「判断する」「実行する」「結果を振り返る」などに分け、その人が今どこまで経験しているかを確認します。たとえば本人案を出せる段階なら、次は小さな範囲の最終判断まで渡してみます。その際、「この金額・範囲までは自分で決めてよい」「この条件になったら相談する」など境界も共有します。大切なのは、信頼できるかできないかという感覚だけで権限を決めないことです。本人がどんな判断を経験し、その結果をどう振り返ってきたかを見ながら、任せる範囲を一段ずつ広げます。また、一度任せたから永久に同じ権限にする必要もありません。新しい挑戦なら再び小さく始めても構いません。権限移譲は「一気に手放すこと」ではなく、本人が自分で決められる領域を経験とともに広げていく育成プロセスとして考えてみてください。
- Q2. 右腕候補の判断が自分と違った時は、修正した方がいいですか?
-
まず「代表と違う」と「判断として問題がある」を分けて考えてみてください。お客様との約束、安全性、会社として守るべきルールなど、外してはいけない基準に反している場合は修正が必要です。一方で、守るべき基準を満たしていて、方法や優先順位が代表と違うだけなら、すぐ正解を教える前に「なぜそう考えた?」と聞いてみます。何を優先したのか、どんな情報を見たのか、どんな未来を考えたのかを本人に説明してもらいます。その上で代表自身も「私はこの情報を見て、こう考えた」と判断過程を共有します。大切なのは、代表の答えを覚えさせることではなく、判断基準を比較して考える経験を増やすことです。右腕候補が代表のコピーになる必要はありません。共通の目的や守るべき基準を持ちながら、その人自身の強みを使って決断できる余白を残すことが、将来本当に任せられるリーダーを育てることにつながります。
- Q3. 失敗させるとお客様や他のスタッフに迷惑がかかりそうで怖いです。
-
失敗すると大きな損失や重大な影響が出る領域を、育成目的だけで任せる必要はありません。重要なのは「失敗させること」ではなく、「本人が自分で決め、その結果から学べる範囲を設計すること」です。たとえば外部公開前に代表が確認する、小規模な企画から任せる、社内で完結する判断から始める、金額や人数に上限を設けるなど、挑戦できる範囲を小さくできます。また代表が最終判断する場面でも、先に本人案を出してもらい、なぜそう考えたのかを聞けば判断経験はつくれます。もし小さな失敗が起きたら、すぐに仕事を取り上げるのではなく、何が起きたのか、どの情報を見落としたのか、次はどこを確認するのか、どう立て直すのかまで一緒に振り返ります。リーダーに必要なのは「一度も間違えない力」だけではありません。想定外のことが起きた時に考え、周りへ相談し、修正して前へ進める力も必要です。その経験を安全な範囲から増やしていきます。
- Q4. 本人にリーダーになる自信がありません。それでも候補にしていいですか?
-
本人が「自信があります」と言えるかどうかだけで、候補から外す必要はありません。まだ経験していない役割に不安を感じることはあります。むしろ見たいのは、自信の大きさだけではなく、小さな役割を渡した時にどう向き合うかです。分からないことを調べるか、人へ相談できるか、自分なりの案を出せるか、失敗した後に振り返れるか、誰かが困っている時に関わろうとするかなど、実際の考動を見ます。そして本人が「リーダーになる」と大きく決められない場合も、まず一人の相談役や一つの企画の進行など、小さな経験から始められます。その経験を振り返り、「何ができた?」「どこに面白さを感じた?」「次は何に挑戦したい?」と本人自身にも発見してもらいます。リーダー候補を代表が一方的に決めつけるのではなく、本人が経験の中で自分の強みや可能性を知り、自分で次の役割を選べる状態をつくることも大切です。
- Q5. 今日から右腕候補を育てるために一つだけするなら何ですか?
-
今日一つだけするなら、普段なら自分が決めている「小さな判断」を一つ選び、右腕候補へ「あなたならどうする?」と聞いてみてください。ただし、答えを当ててもらう質問にはしません。本人が答えたら、「なぜそう考えた?」「何を一番大切にした?」「他の選択肢はある?」と判断の過程を聞きます。その後で、必要なら代表自身の考えと判断基準を共有します。可能な範囲なら、そのまま本人に決定から実行、振り返りまで担当してもらいます。そして終了後に「実際にやってみてどうだった?」「次に同じことが起きたら何を見る?」と振り返ります。右腕候補を育てようとすると、大きな役職や大きなプロジェクトを任せなければと思いがちです。けれども、リーダーをつくる材料になるのは日常にある小さな決断です。代表が今日一つ答えを渡さず、本人が考え、決める経験へ変える。その一回から始めてみてください。
「任せたい人はいる。だけれども、まだ怖い」と感じている主宰者へ
いきなり大きな責任を手放す必要はありません。
今日一つだけ、
「私が答える前に、この人に考えてもらう判断は何?」
を探してみてください。
その小さな決断の積み重ねが、やがて代表の隣で待つ人ではなく、自分で未来を決められる次世代リーダーを育てていきます。
YELL’sでは、HEROコード診断を通して、一人ひとりの考動のアクセルとブレーキ、力を発揮しやすい役割を見つけながら、その人自身の強みを使って考え、決め、人を育てられるリーダーづくりを研究しています。

































