ー コミュニティ主宰者からのご相談 ー
「まだスタッフが5〜10人くらいの小さなチームなのですが、人材育成の仕組みをつくりたいと思っています。
ただ、大企業のような研修制度や評価制度を入れるほどの規模ではないし、私自身も育成だけに時間を使えるわけではありません。
今は分からないことがあると全部私に質問が来て、その都度教えている状態です。
私が教えれば仕事は進むのですが、このまま人数が増えたら、もっと私に仕事が集中するのではないかと不安になっています。
少人数のチームでも無理なく始められて、スタッフが少しずつ自分で考えられるようになる人材育成の仕組みはありますか?」

ー YELL’s大学 学長 吉野加容子より ー
少人数だからこそ、最初から大きな研修制度をつくらなくて大丈夫です。
「質問が来たら代表が答える」を、「問いを渡す→小さく任せる→記録する→振り返る」へ変える。
まずは日常の仕事そのものを、人が育つ場所へ変えていきましょう。
「うちは小さいチームだから、人材育成の仕組みなんてまだ早い。」
そう思っていませんか?
実は、人が少ない時期こそ、育成の仕組みをつくり始めるタイミングです。
なぜなら、人数が少ないチームでは、
- 分からなければ代表へ聞く
- 困ったら代表が助ける
- 判断に迷ったら代表が決める
- 失敗しそうなら代表が修正する
というやり方でも、しばらくは回ってしまうからです。
けれども、その状態のまま人数だけ増えると、
「人を増やしたのに、代表の仕事が減らない」
という状態になりやすくなります。
だから必要なのは、大企業の制度を小さな会社へ持ち込むことではありません。
今ある仕事の中に「人が育つ流れ」をつくることです。
こんなお悩みはありませんか?
- スタッフはまだ数人なので、研修制度までは必要ないと思っている。
- 分からないことがあると全部代表へ質問が来る。
- 毎回その場で教えているため、育成方法が人によってバラバラ。
- マニュアルをつくる時間がない。
- 1on1を増やす余裕もない。
- 代表がいないと判断が止まる。
- スタッフへ任せたいが、失敗されるのが怖い。
- 今後さらに人を増やしたい。
- 将来のリーダー候補を育てたい。
- 代表自身が現場から少しずつ離れられる状態をつくりたい。
この記事でわかること
- 少人数でも人材育成の仕組みが必要な理由
- 研修を増やす前に整えたいこと
- 日常の仕事を育成の場へ変える方法
- 「教える」から「問いを渡す」への変え方
- スタッフへ渡す小さな役割のつくり方
- 経験をチームの知恵へ変える記録方法
- 次のリーダーが育ち始めるチームのつくり方
先にこの記事の結論
少人数チームに必要なのは、立派な研修制度ではありません。
まず、日常の仕事の中に、
問いを渡す
↓
本人が考える
↓
小さな役割を持つ
↓
実際にやってみる
↓
経験を記録する
↓
一緒に振り返る
↓
次の人へ経験を渡す
という流れをつくることです。
「研修の時間だけ育てる」のではなく、「仕事をしながら育つチーム」にする。
これなら、小さなチームから始められます。


少人数チームほど「代表が教えれば回る」という落とし穴がある
たとえば、スタッフが3人だったとします。
一人から質問が来ても、代表が5分で答えれば済みます。
仕事を任せて少し違っていても、代表が修正した方が早い。
会議で意見が出なくても、代表が答えを出せば進みます。
だから、問題が見えにくいのです。
けれども、この状態で人数が増えると、
- 質問する人が増える
- 確認する人が増える
- 判断を待つ人が増える
- 代表が修正する仕事が増える
- 代表しか分からないことが増える
という形で問題が大きくなります。
人数が増えてから育成を考えるのではなく、少人数のうちから「代表が答えなくても進める経験」を増やしておく。
これが大切です。
人材育成の仕組み=研修制度ではない
「人材育成の仕組み」と聞くと、
- 研修プログラム
- 評価制度
- キャリアマップ
- 1on1制度
- 大量のマニュアル
を想像するかもしれません。
もちろん、組織が大きくなれば必要になるものもあります。
ただ、小さなチームの最初の一歩として、全部をそろえる必要はありません。
YELL’sが大切にしているのは、人が育つ場所を日常の中につくることです。
目指すのは、
「また私がやる」ではなく、「私がやります」と言える人が育つ。
「やらされる」ではなく、「一緒に叶えたい」と思える仲間が増える。
止まっても戻れる。
迷っても立て直せる。
正解がなくても、自分で考えて決めて進める。
そんな状態です。
最初に変えるのは「質問が来た時」
少人数チームなら、まず一つだけ変えてみてください。
スタッフから質問が来た時に、すぐ答えを渡さない。
たとえば、
「このお客様にはどう返信したらいいですか?」
と聞かれた時。
これまでなら、
「こう返信して。」
と答えていたかもしれません。
そこを、
「あなたはどう返信しようと思ってる?」
「そう考えた理由は?」
「このお客様が今、一番必要としていることは何だと思う?」
「私たちが大切にしていることから考えると、どうする?」
と返してみます。
YELL’s大学でも、問いを持つことそのものを大切にしています。
与えられた問いへ答えるだけではなく、「これはどういうことなんだろう?」と自分で新しい問いを見つけるところまで進むことで、考える力を育てていきます。
毎回正解を渡すのではなく、本人が答えを探す時間をつくる。
小さなチームなら、まずここから始められます。
次に「小さな役割」を渡す
考えてもらうだけでは、人は育ちません。
考えたことを試せる場所が必要です。
そこで、いきなり大きな仕事を丸ごと任せるのではなく、少し背伸びすればできる役割を渡します。
たとえば、
- 次回会議の進行を一部分だけ任せる
- 新人一人の相談役を任せる
- イベントの一企画だけ責任者になってもらう
- お客様対応の一場面を自分で判断してもらう
- 会議へ改善案を一つ持ってきてもらう
- 自分が学んだことを次の人へ説明してもらう
などです。
「全部任せる」か「全部代表がやる」かの二択にしない。
小さな舞台を一つずつ増やします。
成果事例|「一人で何とかする」からチームの力を使う育成へ
YELL’sでチームづくりを実践してきた、いたがきひまりさんにも大きな転機がありました。
以前は、リーダーとして自分ができるようにならなければ、自分が引っ張らなければという思いが強くありました。
その中で生まれたのが、
「仲間を頼っていいんだ」
「ひとりでやらなくてもいいんだ」
という気づきでした。
そして、
「得意なことは伸ばし、苦手なことはみんなで補っていけばいい!」
というチームづくりへ変わっていきました。
そこから、チームの体制やルール、日々の動き方、コミュニケーションの機会、相談しながら学べる環境などを仲間と整えていきます。
ここで注目したいのは、代表がすべてを教えられるようになったことではありません。
代表一人で人を育てる状態から、チームの中で人が育つ環境をつくる方向へ変わったことです。
「失敗させない育成」から「失敗から学べる育成」へ
スタッフへ任せられない理由の一つに、
「失敗されたら困る」
があります。
もちろん、大きな損失やお客様への重大な影響につながることまで無条件に任せる必要はありません。
けれども、失敗を完全になくそうとすると、本人が判断する場面までなくなります。
ひまりさんの記録にも、挑戦の中でこんな言葉があります。
「先生の前でミスをするから学べる!」
「失敗をするから学べるんだ。」
育成する側が全部失敗を防ぐのではなく、小さく試せて、失敗しても振り返り、次へ活かせる範囲をつくる。
これも人が育つ仕組みの一つです。
やった後に「記録」を残す
少人数チームで特におすすめなのが、経験を短く記録することです。
長い報告書でなくても構いません。
① 何をやった?
② 何が起きた?
③ 何を考えて判断した?
④ 何がうまくいった?
⑤ 次は何を変える?
このくらいでも十分です。
YELL’s大学でも、学んだことだけではなく、その日の気づきから何を持ち帰ると決めたのか、どんな変化・成長・感情があったのかを記録することを大切にしています。
なぜ記録するのか。
本人の成長を振り返るためだけではありません。
その経験を、次の人が使える知恵へ変えるためです。
「できる人」が育ったら、次は「教える側」へ
少人数チームで代表の仕事を本当に減らしたいなら、ここまで考えておきます。
できるようになった人に、次の人を育ててもらう。
たとえば、スタッフAさんがお客様対応を一人でできるようになったとします。
そこで終わらせません。
次に、
「新人さんへ、この判断の仕方を教えてみてくれる?」
と役割を渡します。
教えようとすると、本人も、
自分は何を見ていた?
何を基準に決めた?
どんな順番で考えていた?
を言葉にする必要があります。
そして、代表しか持っていなかった知恵が、
代表 → スタッフA → 新人
と渡り始めます。
ここから、リーダーが次のリーダーを育てるチームへ近づいていきます。
少人数チームなら、まずこの「5つ」だけ整える
① 質問されたら、まず本人の案を聞く
「あなたはどう思う?」を育成の共通言語にします。
② 一人一つ、小さな役割を持つ
全部を任せず、本人が判断できる小さな舞台をつくります。
③ やった経験を短く記録する
成功も失敗も「次に使える知恵」へ変えます。
④ 定期的に振り返る
「できた・できない」ではなく、「何を発見した?」を話します。
⑤ できるようになったら次の人へ教える
代表だけが育成者になる状態から卒業します。
会議も「報告する場所」から「人が育つ場所」に変えられる
新しい研修時間を増やせないなら、今ある会議を使います。
たとえば毎週の会議で、一人3分だけ、
今週、自分で考えて決めたことは?
やってみて何が起きた?
そこから何を発見した?
来週は何を一つ変える?
を共有します。
これなら、別に研修日を一日つくらなくても始められます。
さらに他のメンバーがその話を聞けば、
一人の経験がチーム全体の学びになります。
人が育つ仕組みは「代表がいなくても進める場面」を増やすこと
人材育成というと、スタッフの能力を高めることばかり考えがちです。
けれども、主宰者にとってもう一つ大切な指標があります。
「私が答えなくても進めた場面が、今月いくつ増えた?」
です。
スタッフが自分で案を持ってきた。
スタッフ同士で相談して解決した。
誰かが新人へ教えていた。
会議で改善案が出た。
失敗後、自分で振り返って次の案を持ってきた。
こうした小さな変化を見つけます。
人が育ったかどうかを、「代表と同じレベルでできるか」だけで判断しない。
自分で考え、決め、試し、戻ってこられる場面が増えているかを見ていきます。
HEROコード診断を使うなら「誰に何を任せる?」へつなげる
少人数チームでは、一人ひとりの違いがチーム全体へ与える影響も大きくなります。
YELL’sではHEROコード診断を、誰かを固定的なタイプへ当てはめるためではなく、本人の違いを知り、育成の会話を始める入口として活用しています。
たとえば診断後に、
どんな時に力が出やすい?
どんな場面で止まりやすい?
どんな関わり方なら戻ってこられそう?
今のチームなら、どんな役割で力を試せる?
次にどんな小さな挑戦をしてみたい?
と対話します。
そして診断結果を、実際の役割や挑戦へつなげます。
診断して終わるのではなく、「この人の次の経験をどうつくる?」まで考える。
少人数だからこそ、一人ずつ丁寧に実践できます。
関連記事|小さなチームから「代表依存」を減らす
まとめ|小さなチームだからこそ「人が育つ習慣」を先につくる
スタッフがまだ数人なら、大きな研修制度を急いでつくらなくても構いません。
明日から、まず一つ変えてみてください。
スタッフから、
「これ、どうしたらいいですか?」
と聞かれた時。
すぐ答える前に、
「あなたはどうしようと思ってる?」
と聞いてみる。
本人の案を聞く。
小さく任せる。
やってみる。
記録する。
一緒に振り返る。
できるようになったら、次の人へ教えてもらう。
この繰り返しです。
人が育つ場所は、人数が増えた時に突然つくるものではありません。
まだ顔の見える小さなチームだからこそ、一人ひとりの考動を見ながら、人が育つ習慣をつくれます。
そして、その経験を次の人へ渡せる人が生まれた時、代表一人が育成を背負うチームから、人が人を育てるチームへ変わり始めます。


この記事の監修|吉野加容子


吉野加容子
YELL’s大学 学長。学術博士。脳科学・学習行動の専門家。
YELL’s大学では、知識を学んで終わるのではなく、自分で問いを持ち、考え、決め、動き、その経験を記録しながら次の考動へつなげていくことを大切にしています。
人材育成においても、代表や育成者が答えを与え続けることだけを育成とは考えていません。
一人ひとりの違いを見ながら、本人が何に心を動かし、どんな役割で力を発揮し、どんな場面で考動が止まるのか、次にどんな小さな挑戦を渡せば未来へ進めるのかを考え、人が育つ場そのものをつくることを大切にしています。
また、一人ができるようになって終わるのではなく、実践した経験を言葉と記録へ変え、次の人へ渡し、リーダーが次のリーダーを育てられる状態へつなげていくこともYELL’s大学が取り組むテーマです。
この記事でも、少人数チームへ大きな研修制度を導入することから始めるのではなく、問い・役割・小さな挑戦・記録・振り返りを日常へ組み込み、仕事そのものを人が育つ場所へ変えていくという視点から解説しています。
監修:吉野加容子(学術博士/脳科学・学習行動の専門家/YELL’s大学学長)


少人数チームの人材育成についてのFAQ
- Q1. スタッフが3〜5人でも、人材育成の仕組みは必要ですか?
-
必要性はあります。ただし、大企業のような研修制度や評価制度をそのまま導入する必要はありません。むしろ少人数の時期に整えたいのは、「質問されたら代表が全部答える」「失敗しそうなら代表が巻き取る」「判断はすべて代表がする」という日常の流れです。人数が少ないうちは、この方法でも仕事が回ってしまいます。ところが人が増えると、質問・確認・判断がそのまま代表へ集中しやすくなります。そこで、まず「あなたはどう考えている?」「そう考えた理由は?」「次はどうしてみたい?」と問いを返す習慣をつくります。そして本人が考えたことを試せる小さな役割を渡し、実践後に短く振り返ります。立派な育成制度を先につくるのではなく、問い→小さな役割→実践→記録→振り返りという流れを日常へ入れることから始めてください。顔の見える少人数だからこそ、一人ひとりの変化を見ながら仕組みを育てられます。
- Q2. 人材育成に時間をかけられない場合は、何から始めればいいですか?
-
新しい研修時間をつくる前に、今ある質問対応や会議を育成の時間へ変えてみてください。たとえばスタッフから「これどうしたらいいですか?」と聞かれた時、すぐ正解を渡す代わりに「あなたはどうしようと思っている?」と聞きます。これなら新しい時間を確保しなくても始められます。また週次会議の最後に一人3分だけ、「今週、自分で考えて決めたことは?」「やってみて何が起きた?」「何を発見した?」「来週は何を一つ変える?」を共有する方法もあります。育成を日常業務とは別のものにすると、忙しい小さなチームでは続きにくくなります。仕事をしながら考える、試す、振り返る流れをつくれば、普段の業務そのものが育成機会になります。最初から完璧な制度をつくるより、毎日の中で繰り返せる小さな習慣を一つ決め、それをチームの共通ルールにすることから始めてみてください。
- Q3. スタッフへ考えさせると、仕事が遅くなりませんか?
-
最初は、代表が答えを出すより時間がかかる場面もあります。代表が経験豊富であれば、数秒で分かることをスタッフは数分考えるかもしれません。ただし、毎回代表が答え続ければ、次に同じような問題が起きた時にも再び質問が来る可能性があります。そこで、すべてを本人へ丸投げするのではなく、考えられる範囲を少しずつ広げます。「まず自分の案を一つ持ってきて」「AとBならどちらだと思う?」「私たちが大切にしている基準から考えると?」のように、本人の経験に合わせて問いの大きさを変えてください。また、お客様への重大な影響や大きな損失につながる判断まで、練習として自由に任せる必要はありません。安全に試せる範囲を決め、その中で本人が考える経験を増やします。短期的な速さだけではなく、「次に同じ場面が来た時、代表へ聞かずに判断できるか」まで含めて育成時間を考えることが大切です。
- Q4. マニュアルをつくれば、人は自分で動けるようになりますか?
-
マニュアルは、決まった手順を共有するためには役立ちます。ただし、想定外の出来事まで全部マニュアルへ書くことは難しいため、「なぜこの対応をするのか」「迷った時に何を優先するのか」という判断基準も一緒に渡すことが重要です。たとえば「お客様からこの質問が来たら、この文章を送る」だけではなく、「この場面では、お客様が次に安心して行動できることを優先する」のように、判断の背景まで共有します。その上で、実際のケースについて「あなたならどうする?」「なぜそう考えた?」と対話します。さらに、本人が経験した想定外のケースを短く記録しておけば、次のスタッフへ渡せる教材になります。つまり、完成された巨大なマニュアルを代表一人でつくるのではなく、チームが経験したケースを少しずつ蓄積しながら、判断基準と一緒に育てていく方法です。マニュアルと考える経験を組み合わせることで、手順だけを待つ状態を減らしやすくなります。
- Q5. 少人数チームで次のリーダーを育てるには、何を任せればいいですか?
-
いきなり大きな部署やプロジェクトを任せる必要はありません。まず、その人が少し背伸びすればできる「小さな舞台」をつくります。たとえば次回会議の一部分を進行してもらう、新人一人の相談役になってもらう、イベントの一企画だけ責任者を任せる、お客様対応の一場面について自分の案を出して判断してもらう、といった形です。実践後には「何を考えて決めた?」「うまくいったことは?」「困った時にどうした?」「次は何を変える?」と振り返ります。そして、できるようになった仕事については「次の人へ教えてみてくれる?」と役割を一段上げます。自分ができることと、人へ経験を渡せることは別の力です。代表→スタッフだけで知識が流れる状態から、スタッフ→次のスタッフへ経験が渡り始めた時、チームの中に次のリーダーが育つ土台ができます。少人数だからこそ、小さな役割からその変化を丁寧に見ていけます。
「まだ小さいチームだから」と感じている主宰者へ
人が少ない今だからこそ、始められることがあります。
明日、スタッフから質問されたら、すぐ答える前に一度だけ聞いてみてください。
「あなたはどうしようと思ってる?」
その問いから、代表だけが答えを持つチームではなく、メンバー自身が考えるチームづくりが始まります。
問いを渡す。
小さく任せる。
やってみる。
記録する。
振り返る。
そして、できるようになった人が次の人へ経験を渡す。
人が育つ場所は、偶然できるものではありません。
日常の小さな関わりから、つくっていくことができます。
































