ー 「目標を聞いても、“売上を上げたい”“もっと頑張りたい”しか出てきません」という代表者からのご相談 ー
「仕事は真面目にやってくれるメンバーがいます。
お願いしたこともやってくれるし、
もっと成長したい気持ちもあると思います。
だけれども、1on1などで、
『これからどうなりたい?』
『次は何に挑戦したい?』
と聞くと、
『もっと売上を上げたいです』
『もっとお客様に喜んでもらいたいです』
『もっとできるようになりたいです』
という答えで止まります。
もちろん、それも大切な目標です。
だけれども聞いていると、
会社から求められていることを
“正解として答えている”ようにも感じます。
私が、
『じゃあ次はこれを目指そう』
『この役割に挑戦してみたら?』
と提案すれば動いてくれる。
だけれども、
私が目標まで考え続けていたら、
結局ずっと私が先導することになります。
会社の目標を達成するだけではなく、
本人自身が『私はこうなりたい』を持って、
そこから仕事を考えられるようになってほしいです。
本人の意思から目標を持てる人を育てるには、
どんな関わり方をしたらいいのでしょうか?」

ー YELL’s大学からの回答 ー
目標が出てこない時、
すぐに「目標設定が苦手な人」と
決めなくてもいいかもしれません。
研究したいのは、
「その目標を、誰として考えている?」
ということです。
社員として。
リーダーとして。
お客様のために。
会社のために。
もちろん、どれも大切です。
だけれども役割から考えた目標だけになると、
本人自身が本当はどうなりたいのかが
見えにくくなる場合があります。
そこで一度、
「役割を全部外した時、あなた自身はどうなりたい?」
と問い直してみます。
会社の目標を捨てるためではありません。
会社の目標と、本人が生きたい未来を
つなげ直すためです。
目標があることと、その目標が本人を動かすことは同じではありません。
なかのかほさんも、夢を持っていなかったわけではありません。
子どものこと。家族のこと。仕事のこと。たくさんの夢を描いていました。
だけれども、そこから「母親でも、妻でも、起業家でもない“なかのかほ”として、私はどう生きたい?」を考え始めたことで、夢の描き方が変わっていきました。
この記事では、なかのかほさんが、母親・妻・起業家として「きれいな夢」を描こうとしていた状態から、役割を外して「なかのかほとしてどう生きたいか」を考え始めた実際の事例をもとに、メンバー自身の意思から目標をつくる人材育成について紹介します。
動画で見る|役割を外した時、本当に生きたい未来が見え始めた
こんなお悩みはありませんか?
- メンバーに目標を聞いても「売上を上げたい」しか出てこない
- 会社から求められていることを“正解”として答えているように感じる
- 「どうなりたい?」と聞いても本人の言葉が出てこない
- 代表がキャリアや次の目標まで考えている
- 目標を決めれば動くが、自分から次の目標をつくらない
- 優秀なメンバーなのに、本人が何を目指したいのかわからない
- 会社の目標と本人の人生をつなげたい
なかのかほとは?
なかのかほ ⌇ 子どもの「好き」を得意に育てる
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目標が出てこない人は「やる気がない」とは限らない
メンバーに将来の目標を聞いた時、
「売上を上げたいです」
「もっとお客様に貢献したいです」
「リーダーとして成長したいです」
という答えが返ってくることがあります。
それ自体が間違いなのではありません。
研究したいのは、その言葉を外した時にも「私はこれがやりたい」が残るかです。
会社から期待されていること。
今の役職で求められていること。
周囲から見て評価されそうなこと。
そこだけで目標を考え続けると、本人自身の意思が見えにくくなる場合があります。


Before|夢はたくさん書いていた。それでも自分自身の夢が見えなかった
かほさんも、夢を描いていなかったわけではありません。
家族の未来も、子どもの未来も、仕事の未来も考えていました。
ところが、本人の記録をたどると、夢を書く時に「母親ならこう」「家族のためならこう」という役割が強く影響していたことがわかります。
本当は自分自身の願いが先に浮かんでいた。
だけれども、それをそのまま出すことに抵抗があり、子どもや家族の夢を加えて「きれいにまとめよう」としていました。
インタビュー|「ママなのに自分のことしか考えられない」と思っていた
Q. 当時、夢を描く時にどんなことを感じていましたか?
なかのかほさん:
「みんなのマイプロデュースデザインって、子どもが一番に出てくるんですよ」
「だけど、私は一番にずっと自分が出てきてたんですよね」
「なんで私って、ママになったのに、自分のことしか考えられないんだろうって思っていて」
「一生懸命、子どもとか家族とかを入れよう、入れようって描いて、きれいにまとめようとしていた」
Q. そこから、夢の描き方はどう変わりましたか?
なかのかほさん:
「母親としてじゃなくって、なかのかほとして夢を描き始めたっていうのがターニングポイントだった」
「起業家としてじゃなくて、なかのかほだし」
「本当にただ私がやりたいことっていう妄想に全振りできた」
Q. 「おしゃれ社長」という言葉の先に、本当に求めていたものは何でしたか?
なかのかほさん:
「私って別に、おしゃれになりたいわけではなくて」
「憧れの人と堂々と一緒に横に並べたり、未来に向かった会話ができる、自信のある自分になりたいんだって気がついた」
「役割を全部捨てた私が、なりたい人間像だったのかなと思います」
転換点|「何を達成したい?」より先に「私はどう生きたい?」を考えた
この事例で重要なのは、かほさんがもっと立派な目標をつくったから変わったわけではないことです。
変わったのは、夢を考える時の主語でした。
母親として、どうしたい?
妻として、どうしたい?
起業家として、どうしたい?
↓
「なかのかほとして、私はどう生きたい?」
役割を捨てて生きるという意味ではありません。
役割を一度外すことで、その役割を担っている本人自身の意思を見つけるということです。
組織でも「社員としての正解」だけを聞いていないか?
この変化は、人材育成にも置き換えて研究できます。
例えば代表が、
- 今年の売上目標は?
- 仕事で何を達成したい?
- 次はどの役職を目指す?
- 会社にどう貢献したい?
だけを聞いていると、本人も「社員として正しそうな答え」を探しやすくなります。
そこにもう一つ、
「仕事や役職を一度外した時、あなた自身はどんな人になりたい?」
という問いを加えてみます。
すると、仕事の目標とは直接関係なさそうな言葉が出てくるかもしれません。
その言葉をすぐに「仕事と関係ない」と切らず、今の仕事とどうつながるかを一緒に研究していきます。
本人の意思を見つけるために代表が聞きたい7つの質問
- 会社や今の役職を一度外したら、あなたはどんな人になりたい?
- 今の目標の中で、「会社から言われなくてもやりたい」と思うことはどれ?
- 逆に「こうしなきゃ」と思って書いている目標はある?
- 売上や数字を一度外したら、どんな仕事をしている時が一番面白い?
- 3年後、何ができていたら「私、成長したな」と思える?
- 憧れる人の、肩書きではなく“どんなあり方”に惹かれる?
- その未来に近づくために、今の仕事で一つ挑戦するとしたら何?
「本人の夢を聞く」と会社の目標から離れてしまわない?
ここで代表側には、
「本人のやりたいことばかり聞いたら、会社の方向性とズレるのでは?」
という疑問も出てきます。
本人の意思を聞くことは、会社の目標をなくすことではありません。
会社には会社のゴールがあります。
その上で研究したいのが、
「会社が行きたい未来」と「本人が行きたい未来」の重なる場所はどこか?
です。
例えば本人が、
「人前で堂々と自分の意見を言える人になりたい」
と考えているなら、
- 会議で企画提案を担当する
- お客様へのプレゼンを任せる
- 後輩への共有会を担当する
- プロジェクトの進行役を経験する
など、本人の未来と組織の仕事を重ねられる可能性があります。
代表が「次はこれを目指して」と言い続けなくても動ける人へ
本人自身が未来を持っていない状態では、代表が毎回、
「次はこれをやろう」
「次はここまで成長しよう」
「あなたならこの役職を目指せるよ」
と、次の目的地を渡す必要があります。
一方で本人の中に、
「私はこういう人になりたい」
が見え始めると、仕事を見る視点も変わります。
「この仕事は、私がなりたい自分につながる」
「だったら、ここはもう一歩挑戦してみたい」
「次はこの経験を取りにいきたい」
というように、仕事を「会社から与えられた課題」だけではなく、自分の未来につながる実践として考えられる可能性が生まれます。


メンバーの目標設定・本人の意思についてよくある質問
- Q1. メンバーに目標を聞いても「売上を上げたい」しか出てきません。どうしたらいいですか?
売上目標が悪いわけではありません。その数字を一度横に置き、「それが叶った時、あなた自身はどうなっていたい?」「売上という言葉を使わなかったら、何ができるようになりたい?」と聞いてみます。会社の評価基準から考えることに慣れている人は、「どうなりたい?」と聞かれても仕事上の正解を探す場合があります。なかのかほさんも、家族や仕事の夢を描いていましたが、転換点になったのは「母親としてじゃなくって、なかのかほとして夢を描き始めた」ことでした。数字を捨てるのではなく、数字の先にいる本人を見つけます。
- Q2. 「やりたいことがわかりません」と言う部下には、どう質問すればいいですか?
いきなり大きな夢を答えてもらう必要はありません。「最近、仕事で面白かった瞬間は?」「もっとやってみたいと思ったことは?」「憧れる人のどんなところが好き?」「今より一つ自由に選べるなら何を経験したい?」など、具体的な場面から探します。かほさんも「おしゃれ社長」という言葉だけでは腹落ちせず、その先を掘ることで「おしゃれになりたい」のではなく、憧れの人と堂々と並び、未来に向かった会話ができる自分になりたいことに気づいています。最初の答えをゴールにせず、「それはなぜ?」と研究を続けることがポイントです。
- Q3. 社員個人の夢まで会社が聞く必要はありますか?
プライベートなことまで無理に聞き出す必要はありません。また、本人が話したくない内容を会社へ開示させる必要もありません。一方で、本人が仕事を通してどんな力を身につけたいのか、どんな人でありたいのかを本人の意思で話せる関係は、役割設計の材料になります。「会社のために何をしてくれる?」だけではなく、「あなた自身はこの経験から何を得たい?」という問いを持つことで、会社と本人の未来が重なる場所を探せます。本人の人生を会社が決めるのではなく、本人の意思を尊重しながら、仕事との接点を一緒に研究することが大切です。
- Q4. 本人のやりたいことと会社の目標が合わない場合はどうすればいいですか?
すべてを一致させる必要はありません。まず「本人が何を大切にしたいのか」と「会社がこの役割に何を求めているのか」を分けて確認します。その上で、重なる部分があるかを探します。例えば「人に教えられる自分になりたい」という本人の未来と「新人を育てられる人を増やしたい」という組織課題は重なる可能性があります。一方で、どうしても方向が異なることもあります。その場合も、本人の夢を会社向けに書き換えさせるのではなく、違いを明確にした上で役割や今後について対話する方が、表面だけの目標一致よりも実態を把握しやすくなります。
- Q5. 会社から目標を与えること自体がよくないのでしょうか?
会社として必要な目標を設定すること自体が問題なのではありません。売上、品質、納期、顧客対応など、組織として共通で達成する必要があるものはあります。研究したいのは、それだけが本人の目標になっていないかという点です。会社から与えられた目標に対しても、「この経験を通して自分は何をできるようになりたい?」「自分の強みをどこで使う?」「どんな自分で達成したい?」と本人の意思を加えることができます。同じ目標でも、自分自身の未来との接点が見つかれば、取り組み方や次の一手を本人が考える材料になります。
- Q6. 本人の目標が毎回変わっても大丈夫ですか?
目標が変化すること自体を、すぐに悪いことと捉える必要はありません。実践して初めて「思っていたのと違った」「本当はこっちに興味がある」とわかることもあります。なかのかほさんも、「おしゃれ社長」というフレーズが出た後、それで完全に終わったわけではありません。「私って別に、おしゃれになりたいわけではなくて」とさらに考え、本当に求めていた人間像を言葉にしていきました。大切なのは、一度決めた目標を守り続けることだけではなく、なぜ変わったのか、何を経験して見方が変わったのかを記録し、次の目標へつなげることです。
- Q7. 本人の意思で動ける人が増えると、代表の仕事はどう変わりますか?
本人が自分の未来を持ち、現在の仕事との接点を考えられるようになると、代表が毎回「次はこれを目指そう」「あなたはこれをやって」と目的地まで決め続ける状態から変化する可能性があります。本人から「この経験をしてみたい」「なりたい自分に近づくために、ここへ挑戦したい」という提案が生まれれば、代表は答えを渡すだけではなく、その挑戦が組織の未来とどう重なるかを一緒に考える役割へ移れます。本人の夢を聞くことの目的は、好き勝手に働いてもらうことではなく、自分の意思と組織の目的をつなぎ、自分で次の一手を考えられる人を増やすことです。
動画でもう一度見る|「役割としての夢」から「私自身の夢」へ
この記事の監修|吉野加容子


吉野加容子
YELL’s大学 学長。学術博士。脳科学・学習行動の専門家。
YELL’s大学では、知識や診断結果を知って終わるのではなく、自分で問いを持ち、考え、決め、動き、その経験を記録しながら次の考動へつなげることを大切にしています。
夢や目標についても、社会や周囲から見て正しそうな答えをつくるだけではなく、本人が何を望み、どんな未来を生きたいのかを研究し、日々の考動へつなげていきます。
記録についても、成功した成果だけを残すのではなく、途中で何を考え、どこで止まり、何を試し、何があったから次へ進めたのかを研究材料として残します。
完成した人の答えを見せるだけではなく、挑戦のプロセスから「次の人が再現できる問いや考動」を発見していくことも大切にしています。
また、記録することと公開することは同じではありません。まず本人が自分自身の経験を詳しく振り返り、その後、第三者の情報や公開する必要のない内容を除き、誰かの未来に役立つ部分へ編集していきます。
まとめ|「会社から求められる目標」の中に、本人自身がいるか?
メンバーが、
「売上を上げたい」
「もっと貢献したい」
「リーダーになりたい」
と話していたとしても、それだけで本人の意思がないと決める必要はありません。
一度研究してみたいのは、
「その役割を全部外した時、あなた自身はどうなりたい?」
ということです。
かほさんも、家族や仕事の夢を描いていました。
そこから、
「母親としてじゃなくって、なかのかほとして」
夢を描き始めたことがターニングポイントになりました。
会社の目標をなくすのではなく、「会社が行きたい未来」と「本人が行きたい未来」が重なる場所を見つける。
そこが見えてくると、代表が毎回次の目標を決めなくても、
「私はこうなりたいから、次はこれに挑戦したい」
と、本人自身が次の一手を考える材料が生まれます。
「もっと自分で考えてほしい」と思った時、仕事のやり方を教えるだけではなく、本人自身がどこへ行きたいのかを一緒に研究することも、自走する人材を育てる一つの入口になります。































