ー 「何かあるたびに『どうしたらいいですか?』と聞かれます」という代表者からのご相談 ー
「メンバーには、もっと自分で考えて動けるようになってほしいです。
仕事をお願いすれば、ちゃんとやってくれます。
能力がないとも思っていません。
むしろ、任せられること自体は増えてきました。
だけれども、少し予定外のことが起きると、
『これってどうしたらいいですか?』
『次は何をすればいいですか?』
『これで合っていますか?』
と、私に答えを確認しにきます。
私も聞かれたら答えがわかるので、
その場では教えた方が早いです。
そうしているうちに、
結局いつも私が判断して、
メンバーはその答え通りに動く形になっています。
最近は、
『自分で考えてみて』
と言うこともあるのですが、
そうすると今度は、
間違えないように考えすぎて止まってしまう人もいます。
私が求めているのは、
何でも一人で決めてほしいということではありません。
うまくいかない時にも、
『じゃあ、ここから何ができる?』と自分で次の一手を考えられる人になってほしいです。
代表が答えを教え続けなくても、
メンバー自身が考えて動けるチームをつくるには、
どんな関わり方をすればいいのでしょうか?」

ー YELL’s大学からの回答 ー
メンバーが自分で考えて動けるようになるために、
必要なのは、
「一人で正解を出せるようになること」
だけではありません。
うまくいかなかった時。
周りよりできていないと感じた時。
自分の判断に自信が持てない時。
そんな時にも、
「今の私はここ。じゃあ、ここから何ができる?」
と考え直せること。
自走する人材を育てるなら、
「正解を知っている人」を増やすだけではなく、
正解がわからない場面でも、自分で次の一手をつくれる人を育てる。
という視点も大切です。
自走する人とは、「迷わない人」ではなく、迷った時に自分で次の一手を考えられる人。
なかのかほさんも、最初から自信を持って前へ進めていたわけではありません。
先輩として前へ出たからこそ、周りとの差が見え、「本当に私は先輩なんだろうか」と自信をなくす時期がありました。
そこで変わったのは、自信の量ではなく、「今の自分を受け入れて、ここから次へ進む」考え方でした。
この記事では、なかのかほさんが、周りと比べて「私って全然できていない」と自信をなくしていた状態から、「今、私はここなんだもん」と現在地を受け入れ、自分で「もう一歩何かできないか」と創意工夫して動けるようになった実際の事例を紹介します。
その変化から、代表が毎回答えを教えなくても、メンバー自身が「ここからどうする?」を考えられるチームを育てるヒントを研究します。
動画で見る|自信がなくても「ここからどうする?」を考えられるようになった変化
こんなお悩みはありませんか?
- 何かあるたびにメンバーから「どうしたらいいですか?」と聞かれる
- 代表が答えを出さないと仕事が進まない
- 「自分で考えて」と言うと、今度は考えすぎて止まってしまう
- 失敗すると自信をなくし、次の行動まで止まるメンバーがいる
- 指示されたことはできるのに、自分から提案が出てこない
- もっと自分で考え、決め、動ける人材を育てたい
- 代表の頭の中に判断が集中している
- 代表がいなくても前へ進めるチームをつくりたい
この記事でわかること
- メンバーが自分で考えて動けなくなる理由
- 「自分で考えて」と伝えるだけでは変わりにくい理由
- 自信がない状態でも次の一手を考えられるようになる考え方
- 失敗や比較から止まらずに戻ってくる力の育て方
- 代表が答えを与え続ける状態から抜けるための問い
- 自走する人材を育てる時に研究したいポイント
なかのかほとは?
なかのかほ ⌇ 子どもの「好き」を得意に育てる
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教育心理学 元・塾講師 2児の母
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なぜ「自分で考えて」と言っても、自走する人材にならないのか?
メンバーがすぐ答えを聞きにくる時、代表側から見ると、
「もう少し自分で考えてほしい」
と感じるかもしれません。
そこで、
「どうしたらいいと思う?」
「一回自分で考えてみて」
と返してみる。
それでも、自分で考えることに慣れていない人は、
- 間違えたくない
- 正解を出さなければいけない
- 代表が期待している答えを当てたい
- 自分の案に自信がない
となり、考えた結果、さらに止まってしまうことがあります。
ここで研究したいのは、
「正解を考える力」と「今いる場所から次の一手を考える力」は、少し違う
ということです。


Before|前に出るほど「私って全然できていない」が見えてきた
なかのかほさんも、学び続ければ迷わなくなったわけではありません。
HEROアカデミーで「先輩」という役割を持ち、積極的にアウトプットできるようになった後、新しい壁にぶつかりました。
周りを見るほど、経験や実践の違いが見えてきたのです。
「私はこれ、本当に先輩なんだろうか」
そう感じるほど、自信をなくす時期がありました。
つまり、成長して前へ出るようになったからといって、迷いがなくなるわけではありません。
むしろ、新しい場所へ進んだからこそ、今まで見えていなかった差や課題が見えることがあります。
転換点|変えたのは「自信の量」ではなく、今の自分との付き合い方
かほさんの変化で重要なのは、
「自信がついたから、迷わなくなった」
という話ではないことです。
本人自身、当時について「自信があるかないかで言ったら、やっぱりない」と話しています。
それでも、止まり続けるのではなくなりました。
変わったのは、
できていない今の自分を否定するのではなく、「私は今ここにいる」と受け入れ、そこから次へ進む
というスタンスでした。
インタビュー|「今、私はここなんだもん」から次へ進めるようになった
Q. 自信をなくした状態から、何が変わったのでしょうか?
なかのかほさん:
「吹っ切れたっていう表現が一番近いのかなと思うんですけど」
「自信があるかないかで言ったら、やっぱりない」
「今の自分を受け入れられるようになったなっていうのがあって」
「もうしょうがない。今、私はここなんだもん」
「今ようやくそれに気づきました。だけど、ここからやっていきます、っていうスタンスになった」
「今の自分を受け入れて、次、次って、一歩ずつやっていけばいいんだなっていう意味で吹っ切れましたね」
Q. その後、動き方にはどんな変化がありましたか?
なかのかほさん:
「今までだったら諦めたり、止まっちゃって苦しくなってたシーンで、自力で動き出せたり、もう一歩っていうのができるようになった」
「楽しそうに夢を叶えるのが私なんじゃんって」
「じゃあもう一歩何かできないかって、創意工夫をしようって動けたり」
After|「正解を教えてもらう」ではなく、自分で“もう一歩”をつくる
この変化を人材育成の視点で見ると、大切なポイントがあります。
かほさんは、
「正解が全部わかる人」
になったわけではありません。
自信が完全についたわけでもありません。
それでも、以前なら諦めたり止まったりしていた場面で、
「じゃあもう一歩何かできないか」
と、自分で創意工夫して動くようになりました。
以前
うまくいかない
↓
できていない自分を見る
↓
苦しくなる
↓
諦める・止まる
変化後
うまくいかない
↓
「今、私はここ」と現在地を受け入れる
↓
「ここからやっていきます」
↓
「もう一歩何かできないか?」
↓
創意工夫して動く
代表が欲しいのは「何でも一人でできる人」ではないはず
「メンバーに自走してほしい」と考えた時、
自走を、
「代表に一切聞かず、何でも一人で判断できる状態」
と捉える必要はありません。
仕事では、相談した方がいいこともあります。
確認が必要なこともあります。
研究したいのは、相談する前の思考です。
例えば、
「どうしたらいいですか?」
だけで来るのか。
それとも、
「今こういう状態です。私はAとBが考えられると思っています。私はAを試したいのですが、どう思いますか?」
と、自分の現在地と次の一手を持って相談できるのか。
この違いは大きいです。
答えを教える代わりに、代表が返したい4つの問い
メンバーから、
「どうしたらいいですか?」
と聞かれた時。
すぐに答えを渡す前に、次の問いを一緒に研究できます。
1|今、何が起きている?
まずは評価ではなく、現在地を確認します。
「失敗しました」ではなく、何をして、何が起きて、今どこで止まっているのか。
2|本当はどうしたい?
代表の正解を当てる前に、本人がどこへ進みたいのかを言葉にします。
3|ここからできることは何がある?
いきなり「正解は何?」と考えるのではなく、今の場所からできる選択肢を出します。
4|その中で、まず何をやってみる?
最後は本人が一つ選び、行動へ変えます。
この会話を繰り返すことで、
「代表から答えをもらう」から「自分の考えを持って相談する」
へ変化する可能性があります。
「自分で考えて」ではなく、考えるプロセスを一緒につくる
自走してほしい人に、
「自分で考えて」
とだけ伝えても、考え方そのものがわからなければ動けません。
だから最初は、代表との会話の中で、
- 現在地を見る
- 自分がどうしたいかを考える
- できることを出す
- 一つ選ぶ
- やってみる
- 結果を記録する
- 次の一手を考える
という思考の流れを経験してもらいます。
そして少しずつ、代表が問いを出さなくても本人自身が、
「今どうなってる?」
「私はどうしたい?」
「ここから何ができる?」
と考えられる状態を目指します。
自走する人材を育てるなら「止まらない人」を探すのではなく「戻れる人」を育てる
仕事をしていれば、迷うことはあります。
自信をなくすこともあります。
人と比べてしまう日もあります。
だから、
一度も止まらない人を育てる
ことだけをゴールにしなくてもいい。
むしろ、
止まりそうになった時に、自分の現在地へ戻り、もう一度次の一手を出せる人を育てる。
かほさんの記録から研究できるのは、まさにこの変化です。
本人は「自信があるかないかで言ったら、やっぱりない」と話しています。
それでも、
「今の自分を受け入れて、次、次って、一歩ずつやっていけばいい」
というスタンスへ変わりました。
そして実際に、以前なら止まっていた場面で、
「じゃあもう一歩何かできないか」
と創意工夫して動けるようになっています。


メンバーが自分で考えて動かない時によくある質問
- Q1. なぜメンバーは何でも代表に「どうしたらいいですか?」と聞くのでしょうか?
能力がないとは限りません。これまで「困ったら代表に確認する→代表が正解を教える→その通りに動く」という経験が積み重なっていれば、それが仕事の進め方として定着している可能性があります。また、間違えることへの不安が強いと、自分の案を出すより代表の正解を確認した方が安全になります。そこで、相談を禁止するのではなく「今どうなっている?」「あなたはどうしたい?」「どんな方法が考えられる?」「まず何を試す?」と、本人の考えを持って相談する経験を増やします。目指すのは一人で抱え込む人ではなく、自分の現在地と仮説を持って相談できる人です。
- Q2. 「自分で考えて」と言っても考えられない社員にはどうすればいいですか?
「自分で考えて」という言葉だけでは、何をどう考えればいいのかわからない場合があります。最初は考えるプロセスそのものを一緒につくります。「今何が起きている?」「本当はどうしたい?」「ここからできることは?」「その中で何を試す?」と順番に問い、本人自身に言葉にしてもらいます。重要なのは、最初から正解を求めすぎないことです。なかのかほさんの事例でも、自信が完全についたから動けるようになったのではなく、今の自分を受け入れ、そこから一歩ずつ進むスタンスへ変わっています。考える経験を繰り返すことが、自分で次の一手をつくる練習になります。
- Q3. 自走する社員とは、上司に相談しない社員のことですか?
相談しないことが自走とは限りません。仕事では、権限やリスクによって確認すべき場面があります。研究したいのは「相談するかどうか」ではなく、相談する時に本人の思考があるかです。「どうしたらいいですか?」だけなのか、「今こういう状況で、AとBが考えられます。私はAを試したいと思っています」と自分の現在地・選択肢・考えを持って相談できるのか。後者であれば、周囲の力を借りながらも本人自身が考えています。自走を「全部一人でやること」と定義すると、抱え込みを生むこともあるため、考えた上で適切に相談できる状態を目指します。
- Q4. 失敗するとすぐ自信をなくして止まるメンバーには、どう関わればいいですか?
すぐに「大丈夫」「あなたならできる」と自信を戻そうとするだけではなく、まず現在地を一緒に確認します。何を試し、何が起こり、どこまではできていて、今どこで止まっているのか。その上で「ここから何ができる?」と次の一手を考えます。かほさんも「自信があるかないかで言ったら、やっぱりない」と話しながら、「今、私はここなんだもん」「ここからやっていきます」というスタンスへ変わっています。育てたいのは、失敗しても一切落ち込まない人ではなく、止まった後に現在地を受け入れ、次の行動へ戻れる人だと考えることができます。
- Q5. メンバーに考えさせると仕事が遅くなりませんか?
短期的には、代表が答えを教えた方が早い場面もあります。特に緊急時やリスクの高い判断では、代表が決める必要があります。一方で、すべての場面で代表が答えを出し続けると、同じ種類の相談が繰り返される可能性があります。そのため、緊急性の低い仕事や振り返りの時間では、本人に考えてもらう時間を意図的につくります。「今回は私が判断する。終わった後に、次に同じことが起きたらどうするか一緒に研究しよう」という方法もあります。今の業務スピードと、将来の判断力育成を分けず、両方を見ることが大切です。
- Q6. 自分で考えられるメンバーを育てるために、代表がやめたいことは何ですか?
一つ研究したいのは、本人が考える前に代表がすべての答えを言っていないかです。代表は経験があるため、問題を聞いた瞬間に解決策が見えることがあります。その答えを毎回すぐ渡すと、問題は早く解決しても、本人が「状況を見る→選択肢を考える→決める→試す→振り返る」という経験を持ちにくくなります。答えを一切教えないのではなく、どこまで本人に考えてもらい、どこから代表が判断するかを分けます。そして本人が出した案に対して、正誤だけではなく「なぜそう考えた?」まで聞くことで、判断のプロセスを育てていきます。
- Q7. 代表がいなくても進むチームをつくるには何から始めればいいですか?
まず、代表に集中している「判断」を見つけます。メンバーが毎回聞いてくる質問を記録すると、何を代表だけが決めているのかが見えます。その中から、メンバー自身が考えられるものを選び、「次から聞く前に、現状・自分の考え・選択肢・やってみたい一手を持ってきて」とルールを変えてみます。そして実践後に結果を振り返ります。大切なのは、一度説明して終わることではありません。考え、決め、動き、記録し、次の一手をつくる経験を繰り返すこと。代表の答えを覚える人ではなく、自分で問いを持って考えられる人を増やすことが、自走するチームへの一歩になります。
動画でもう一度見る|「止まる私」から「もう一歩何かできないか」を考える私へ
この記事の監修|吉野加容子


吉野加容子
YELL’s大学 学長。学術博士。脳科学・学習行動の専門家。
YELL’s大学では、知識や診断結果を知って終わるのではなく、自分で問いを持ち、考え、決め、動き、その経験を記録しながら次の考動へつなげることを大切にしています。
記録についても、成功した成果だけを残すのではなく、途中で何を考え、どこで止まり、何を試し、何があったから次へ進めたのかを研究材料として残します。
完成した人の答えを見せるだけではなく、挑戦のプロセスから「次の人が再現できる問いや考動」を発見していくことも大切にしています。
また、記録することと公開することは同じではありません。まず本人が自分自身の経験を詳しく振り返り、その後、第三者の情報や公開する必要のない内容を除き、誰かの未来に役立つ部分へ編集していきます。
まとめ|「答えを知っている人」ではなく「次の一手をつくれる人」を育てる
メンバーが自分で考えて動かない時、
「もっと主体性を持って」
と伝えるだけでは、変化しにくいことがあります。
研究したいのは、本人が止まった時に何をしているかです。
困る
↓
代表に正解を聞く
↓
答え通りに動く
から、
困る
↓
今の状況を見る
↓
自分はどうしたいか考える
↓
ここからできることを出す
↓
一つ決める
↓
動いてみる
↓
結果から次を考える
へ。
なかのかほさんも、迷わなくなったわけではありません。
自信がなくても、
「今、私はここなんだもん」
と現在地を受け入れ、
「じゃあもう一歩何かできないか」
と自分で創意工夫して動くようになりました。
代表が欲しいのも、きっと一度も迷わない完璧なメンバーではありません。
迷った時、うまくいかなかった時、正解が見えない時にも、
「私は今ここ。じゃあ、ここからどうする?」
と自分で考え、次の一手を出せる人。
そんな人が一人、また一人と増えていくことが、代表一人の判断に依存しないチームへの一歩になります。































