ー コミュニティ主宰者からのご相談 ー
「スタッフに同じことを何度も伝えているのですが、なかなか変わりません。
たとえば『早めに相談してね』『相手の立場まで考えてね』『分からないまま進めないでね』と、その時は本人も『分かりました』と言ってくれます。
けれど、しばらくするとまた同じことが起きます。
私の伝え方が悪いのでしょうか?
強く言うと萎縮させそうだし、優しく言っても伝わっていない気がして、どう関わればいいか分からなくなってきました。
本人を責めずに、それでもちゃんと行動が変わる伝え方はありますか?」

ー YELL’s大学 学長 吉野加容子より ー
「分かりました」と言っているのに変わらない時は、同じ説明を強くする前に、本人が何を「分かった」と受け取ったのかを確認してみてください。
伝える → 本人の言葉で意味づける → 次の行動を本人が決める → 実践後に振り返る。
ここまでつながって初めて、「聞いたこと」が本人の行動へ変わり始めます。
「前にも同じこと、言ったよね?」
チームを育てていると、何度も言いたくなる瞬間があります。
もっと早く相談してほしい。
確認してから進めてほしい。
お客様の立場まで考えてほしい。
周りを見てほしい。
同じミスを繰り返さないでほしい。
一度目は丁寧に伝えた。
二度目も伝えた。
三度目になると、さすがに代表側にもモヤモヤが残ります。
「本人も『分かりました』って言っていたのに、どうしてまた同じことが起きるんだろう?」
ここで、
「もっと強く言わないと伝わらないのかな」
と考えることがあります。
けれども、見直したいのは声の強さだけではありません。
「伝えたこと」と「本人が次の場面で使えるようになったこと」は同じではないからです。
こんなお悩みはありませんか?
- 何度同じことを伝えても、また同じことが起きる。
- 本人は毎回「分かりました」と言っている。
- 強く言うと萎縮させそうで怖い。
- 優しく伝えるだけでは届いていない気がする。
- 注意する回数ばかり増えて疲れている。
- 「もう何回言えば分かるの?」と思ってしまう。
- スタッフ本人に悪気があるようには見えない。
- 伝えたことを別の場面へ応用できない。
- 注意し続けなくても自分で気づけるようになってほしい。
- 本人を否定せずに、必要な改善はきちんと伝えたい。
この記事でわかること
- 「分かりました」と言っても行動が変わらない理由。
- 同じ注意を繰り返す前に確認したいこと。
- 人格ではなく事実を伝える方法。
- 本人が何を受け取ったのか確認する問い。
- 抽象的な注意を具体的な判断基準へ変える方法。
- 本人自身に次の行動を決めてもらう意味。
- 一度の注意を次の成長へつなげる振り返り方。
先にこの記事の結論
何度伝えても変わらない時、同じ言葉をさらに強く繰り返す前に、伝え方を次の流れへ変えてみてください。
何が起きたか、事実を一緒に見る。
本人はどう考えていたのかを聞く。
代表が何を大切にしているのか伝える。
本人の言葉で「何が分かった?」を話してもらう。
次に同じ場面が来たらどうするか、本人が決める。
実践後に「できた・できなかった」ではなく、何が起きたかを振り返る。
つまり、
「伝えること」をゴールにせず、「本人が次の場面で使えるところまで」を育成にする。
この視点が重要です。


「分かりました」は、何を分かったのか?
たとえばスタッフへ、
「もっと早く相談してね。」
と伝えたとします。
スタッフは、
「分かりました。」
と答えます。
ここで会話が終わると、実は双方が違う意味を持っている可能性があります。
代表が考えている「早め」は、
「少しでも納期が危ないと感じた時点」
かもしれません。
一方、スタッフの「早め」は、
「自分で何度か試して、それでも無理だった時」
かもしれません。
同じ言葉でも判断基準が違います。
そこで、伝えた直後に一つ聞きます。
「今の話を、あなたの言葉で言うとどういうこと?」
すると初めて、何が届き、何がずれているのかが見えてきます。
同じことが起きた時、「性格」ではなく「一場面」を見る
何度も続くと、代表側もつい、
「何度言っても聞いてくれない」
「責任感がない」
「周りが見えていない」
と、その人全体を表す言葉を使いたくなります。
けれども、改善したいなら一場面まで小さくします。
「昨日の○○の件で、予定より遅れそうになった時点では相談がなかったよね。」
「その時、あなたの中ではどんな状況だった?」
「どの時点で相談しようと思っていた?」
「何があれば、もう少し早く相談できたと思う?」
と聞きます。
人物評価ではなく、事実 → 判断 → 行動を一緒に見る。
こうすると、本人も自分の行動を研究しやすくなります。
本人に響く言葉を探す前に「本人の見えていた世界」を聞く
同じことが繰り返されると、
「もっと響く言葉はないかな?」
と考えたくなります。
けれども、その前に聞きたいことがあります。
「本人は、その瞬間に何を見て、何を考えていた?」
たとえば相談が遅れた人でも、
迷惑をかけたくなくて自分で解決しようとしていた。
この程度なら自分で判断すべきだと思っていた。
忙しそうな代表へ聞くのを遠慮していた。
相談する基準そのものが分からなかった。
では、必要な関わり方がそれぞれ違います。
YELL’sでも、人を育てる時に、育成者の伝えたいことへ相手を合わせるだけではなく、その人が持っている力をどこで発揮できるのかという視点を大切にしています。
「どう言えばこの人を動かせる?」から、「この人は何を受け取って、どこで止まっている?」へ。
問いを変えると、必要な言葉も見つけやすくなります。
抽象的な注意は「次に何を見る?」まで具体化する
何度伝えても変わりにくい言葉の一つが、抽象的な言葉です。
たとえば、
「もっと周りを見て」
「相手の立場になって」
「早めに動いて」
「責任を持って」
「もう少し考えて」
という言葉。
方向性として間違っていなくても、次に同じ場面が来た時に何をすればいいのかが曖昧です。
そこで、
「次は何を見れば、そのことに早く気づけそう?」
まで一緒に考えます。
たとえば、
「納期の半分を過ぎても半分以上残っていたら、一度相談する。」
「お客様から同じ質問が二度来たら、説明が不足していないか確認する。」
「自分だけで15分考えても判断材料が増えなければ、一度相談する。」
のように変えられます。
気持ちの持ち方だけではなく、次に使える観察ポイントや判断基準まで渡します。
「次から気をつけます」で終わらせない
改善の話をすると、本人から、
「次から気をつけます。」
と返ってくることがあります。
ここでもう一歩だけ具体化します。
「次に同じことが起きそうになったら、具体的に何をする?」
と聞きます。
本人から、
「前日の時点で一度進捗を確認します」
「分からない時は自分の案を一つ作ってから相談します」
「お客様からの返信がいつもと違ったら一度共有します」
という言葉が出れば、次の実践へつながります。
改善策を代表が全部決めるのではなく、本人にも決めてもらう。
自分で決めた一歩だからこそ、その後の振り返りもできます。
注意したその日より「次に同じ場面が来た日」が育成の本番
大切なのは、注意した直後に本人が納得したかだけではありません。
次に似た場面が来た時、何ができたか。
ここを見ます。
たとえば、以前より少し早く相談できた。
完璧ではないけれど、自分で違和感に気づいた。
代表へ聞く前に、自分の案を一つ考えてきた。
そんな小さな変化があれば、
「前回より、今回はここで自分から動けていたね。何が違った?」
と振り返ります。
本人自身が、
「今回はここを見たから気づけた」
と言葉にできれば、一回の成功が次にも使える経験になります。
「またできなかった」と責めるより、どこで止まったかを見る
一度話し合ったのに、また同じことが起きる場合もあります。
そんな時も、
「やっぱり分かっていなかったんだね」
で終わらせず、前回決めた行動のどこで止まったのかを見ます。
気づけなかった?
気づいたけれど判断できなかった?
判断したけれど怖くて動けなかった?
動こうとしたけれど時間がなかった?
相談しようとしたけれど遠慮した?
原因によって、次に必要な支援は違います。
同じ結果が起きたからといって、同じ理由で止まっているとは限りません。
ここを研究することが、人を一律に育てないためのポイントです。
伝えたことを「本人の考動」へ変える6つの問い
①「その時、あなたにはどう見えていた?」
代表が見ていた状況と本人が見ていた状況の違いを確認します。
②「どう考えて、その行動を選んだ?」
行動だけではなく、その手前にあった判断を聞きます。
③「今の話を、自分の言葉で言うと?」
代表の説明と本人の理解が同じか確認します。
④「次に似た場面が来たら、何を見る?」
次に気づくための観察ポイントを決めます。
⑤「その時、具体的に何をする?」
「気をつけます」を実際の行動へ変えます。
⑥「やってみて、何が分かった?」
実践を次にも使える本人の経験へ変えます。
本人に合わせることと、必要なことを言わないことは違う
「相手に響く伝え方」と聞くと、
「相手が傷つかない言葉を選ばなきゃ」
と考えることがあります。
もちろん、伝え方への配慮は大切です。
けれども、本人に合わせることは、必要な改善を曖昧にすることではありません。
何が起きたのか。
なぜ変える必要があるのか。
チームとして何を大切にするのか。
は明確に伝えます。
その上で、
「あなたにはどう見えていた?」
と聞く。
「言うべきことを言う」と「相手の考えを聞く」は両立できます。
「伝わったか」を確認する3つのサイン
① 本人の言葉で説明できる
代表の言葉をそのまま復唱するだけではなく、「つまり私は○○を見る必要があるんですね」と本人なりに言葉へ置き換えられている。
② 次の行動を本人が具体的に決められる
「気をつけます」ではなく、「次回は○○の時点で一度相談します」と言える。
③ 次の実践後に、自分で違いを振り返れる
「今回はここを見たから前より早く気づけました」など、本人自身が変化の理由を説明できる。
この三つが増えてきたら、代表から渡された言葉が少しずつ本人の判断材料へ変わり始めています。
関連記事|「伝えたのに変わらない」を人材育成へ変える
YELL’sが考える「伝える」だけで終わらない人材育成
YELL’sでは、人が同じところで止まった時に、すぐ「やる気がない」「何度言っても分からない」と決めつけるのではなく、その人がどこで考動を止めているのかを小さく見ていきます。
同じ行動が起きていても、
何を見るか分からなかった。
判断基準が分からなかった。
自分で決めていい範囲が分からなかった。
失敗することが怖かった。
相談することを遠慮していた。
など、止まる場所は一人ひとり違います。
だから、全員へ同じ言葉を繰り返すだけではなく、本人の見えていたことを聞き、問いを渡し、小さな実践をつくり、振り返りながら次の考動へつなげます。
「どう言えば言うことを聞いてくれるか」ではなく、「この人が自分で気づき、考え、決められるようになるには何が必要か」。
その視点で、人が育つ関わり方を研究しています。
まとめ|「何度言えば分かる?」を「どこまで届いた?」へ変える
同じことを何度伝えても変わらない。
そんな時は、言葉をさらに強くする前に、一度確認してみてください。
本人は、何を分かったと思っている?
その時、本人には何が見えていた?
次に同じ場面が来た時、何を見れば気づける?
その時、何をするか本人自身が決められている?
そこまで確認します。
そして実践後に、
「今回は何ができた?何がまだ難しかった?」
と振り返ります。
伝える → 分かったと言ってもらう、で終わらず、本人が意味づける → 決める → やってみる → 振り返るところまでつなげる。
それが、「何度言っても直らない」を「少しずつ自分で変えられる」へ変えていく関わり方です。


この記事の監修|吉野加容子


吉野加容子
YELL’s大学 学長。学術博士。脳科学・学習行動の専門家。
YELL’s大学では、学んで終わるのではなく、自分で問いを持ち、考え、決め、動き、実践を振り返りながら次の考動へつなげていくことを大切にしています。
人材育成においても、「正しい答えを教え続ける」ことだけを育成とは捉えません。
人によって、見えているもの、心が動くもの、止まりやすい場面、得意な役割は違います。
その違いを見ながら、本人が自分で気づき、考え、決断し、小さく実践できる状態をどう育てるかを、YELL’s大学の講義・実践・記録・振り返りの中で扱っています。
この記事でも、「何度言えば分かるのか」という伝える側だけの視点で終わらず、相手には何が届き、どこで止まり、どんな問いや経験があれば次の考動へ進めるのかという視点から、チーム育成の方法を解説しています。
監修:吉野加容子(学術博士/脳科学・学習行動の専門家/YELL’s大学学長)
吉野加容子のプロフィール・活動について詳しく見る


何度伝えてもスタッフが変わらない時のFAQ
- Q1. 何度言っても同じミスをするのは、本人にやる気がないからですか?
-
同じことが繰り返されているだけでは、やる気がないとは判断できません。本人が「分かりました」と言っていても、代表と本人で判断基準が違っていたり、次に何を見ればいいのか分かっていなかったり、気づいていても自分で動いてよい範囲が分からなかったりすることがあります。まず、一つの具体的な場面へ戻り、「その時、あなたにはどう見えていた?」「何を考えてその行動を選んだ?」「どの時点で相談しようと思っていた?」と聞いてみてください。そこで代表の想定との違いが見つかれば、次に必要なのは注意の回数を増やすことではなく、その判断基準を共有することです。そして「次に同じ場面が来たら何を見る?」「その時は何をする?」を本人自身の言葉で決めてもらいます。一度の結果から人物全体を評価せず、見る・気づく・決める・動くのどこで止まっているのかを分けて確認すると、育成できる場所が見えやすくなります。
- Q2. 強く言わないと伝わらない気がします。厳しく注意した方がいいのでしょうか?
-
必要なことを明確に伝えることと、強い言葉で相手を追い込むことは別です。お客様との約束、安全、チームのルールなど、守る必要があることは曖昧にせず伝える必要があります。一方、声を強くすれば相手が次から自分で判断できるようになるとは限りません。大切なのは、「何が問題だったのか」「なぜ変える必要があるのか」「次にどの情報を見て判断すればいいのか」まで具体化することです。たとえば「もっと早く相談して」と繰り返すのではなく、「納期に遅れる可能性を感じた時点で共有してほしい。今回はどの時点で遅れそうだと感じた?」と事実を使って話します。その後に「次回は何を見たら早く気づけそう?」と本人へ問いを返します。厳しさを言葉の強さだけで表現するのではなく、必要な基準は明確にしながら、本人にも考えてもらう。言うべきことを言うことと、相手の考えを聞くことは両立できます。
- Q3. 本人は毎回「分かりました」と言います。本当に理解しているか確認するにはどうすればいいですか?
-
「分かりました」の後に、「今の話をあなたの言葉で説明すると、どういうこと?」と一つ聞いてみてください。代表の言葉をそのまま復唱してもらうのではなく、本人がどう意味づけたのかを確認します。たとえば代表が「早めに相談して」と伝え、本人が「自分で解決できなくなったら相談するということですね」と答えたなら、代表が想定する「早め」と違っている可能性があります。そこで「私は、問題が確定してからではなく、遅れそうだと感じた時点で共有してほしいと思っている」と判断基準まで説明できます。その後に「じゃあ次に同じことが起きたら、どの時点で相談する?」と聞き、本人自身に具体的な行動を決めてもらいます。さらに実践後に「今回はどこで気づけた?」まで振り返れれば、理解が行動へつながったか確認できます。理解を確認するとは、説明内容を暗記できたかを見ることではなく、別の場面でも本人が判断材料として使えるかを見ることです。
- Q4. 相手によって伝え方を変えると、不公平になりませんか?
-
チームとして守る基準まで人によって変える必要はありません。たとえば、お客様との約束を守ること、必要な報告をすること、安全上のルールを守ることなど、共通して必要な基準は全員へ同じように示せます。一方、その基準を理解して実践できるようになるまでの関わり方は、一人ひとり違っていて構いません。具体例があると理解しやすい人もいれば、まず自分で考えてから話した方が整理しやすい人もいます。小さく試すことで理解する人もいれば、過去のケースと比較すると気づける人もいます。YELL’sでも、人を育てる際に、育成者と同じ人にしようとするのではなく、その人が持つ力をどの場面で発揮してもらえるかという視点を大切にします。「基準を人によって変える」のではなく、「基準へたどり着くための支援を本人に合わせる」と考えると分かりやすいでしょう。同じゴールへ、全員が同じ道から進まなくてもよいという考え方です。
- Q5. 今日から一つだけ変えるなら、何をすればいいですか?
-
次に同じことを伝える場面が来た時、「前にも言ったよね」と説明を始める前に、「その時、あなたにはどう見えていた?」と聞いてみてください。本人の答えを聞いた後に、「私はこう見えていた」と代表側の視点を伝えます。次に「今の話から何が分かった?」と本人の言葉へ置き換えてもらい、最後に「次に似た場面が来たら、何を見る?何をする?」と具体的な行動を一つ決めてもらいます。そして次に似た場面が起きた時、以前より少しでも変化があれば、「今回は何が違った?」と振り返ります。これだけでも、会話が「注意する→分かりました→終了」から、「事実を見る→本人の考えを知る→基準を共有する→本人が決める→実践する→振り返る」へ変わります。本人に響く魔法の一言を探すより、本人が自分自身の経験から意味づけし、次の行動まで決める時間をつくることから始めてみてください。
「もう何回言えば分かるんだろう」と感じている主宰者へ
次に同じことが起きた時、もう一度説明する前に、一つだけ聞いてみてください。
「その時、あなたにはどう見えていた?」
そこから、代表には見えていて本人にはまだ見えていなかったものが分かるかもしれません。
そして、伝えた後には、
「じゃあ、次は何を見る?何をする?」
まで本人自身に決めてもらいます。
「伝わる言葉」を探し続けるのではなく、本人が自分で気づき、考え、次の一歩へ置き換えられる対話を増やしていきましょう。
YELL’sでは、HEROコード診断を入り口に、一人ひとりの違いを見ながら、自分で考え、決め、動ける人とチームづくりを研究しています。
































