ー コミュニティ主宰者からのご相談 ー
「社員やスタッフを育てているのですが、同じことを伝えてもすぐ動ける人と、なかなか動けない人がいます。
『本人のやる気の問題なのかな』と思うこともあるのですが、真面目に取り組んでいる人まで一括りにしたくありません。
最近、脳科学を人材育成へ活かす方法があると聞いたのですが、実際にはどんなことをするのでしょうか?
脳のタイプを診断するだけではなく、本人が自分で考えて動けるようになるところまで、現場の育成に活かせる方法があれば知りたいです。
『動けない人』を責めるのではなく、その人に合った育て方を見つけることはできますか?」

ー YELL’s大学 学長 吉野加容子より ー
人が動かない時に、すぐ「やる気がない」と決めないことから始めてみてください。
人材育成で大切なのは、本人がどこで止まっているのかを観察し、その人が考え、試し、振り返れる環境をつくることです。
脳科学や学習行動の視点も、現場での関わり方へ置き換えてこそ育成に活かせます。
「何度言っても動かない。やる気がないのかな?」
スタッフ育成をしていると、そう感じる瞬間があります。
同じ説明をした。
同じ目標を伝えた。
同じ仕事を任せた。
それなのに、
すぐ動く人。
何度も確認する人。
失敗が怖くて止まる人。
最初は動くけれど続かない人。
がいます。
ここで全員へ、
「もっと主体的に動いて。」
と同じ言葉を渡しても、同じように進むとは限りません。
YELL’sでは、人が動かない状態を単純に「本人のやる気不足」と決めつけるのではなく、どんな場面で止まっているのか、何を考え、どう感じ、どんな関わりや環境があれば次の一歩へ進めるのかを見ていきます。
脳科学や学習行動の知識を、人材育成の現場へどう置き換えるのか。
この記事では、その考え方を具体的に整理します。
こんなお悩みはありませんか?
- 何度伝えてもスタッフが動かない。
- 同じ育て方なのに、人によって成長速度が違う。
- 「やる気がない」と判断してよいのか迷う。
- スタッフが失敗を怖がって挑戦しない。
- 研修で学んでも現場へ戻ると元に戻る。
- 「もっと自分で考えて」が伝わらない。
- 本人に合った声かけが分からない。
- 行動が続く人と続かない人の違いを知りたい。
- 感覚ではなく、人が育つ仕組みをつくりたい。
- 脳科学を実際の人材育成へ活かしたい。
この記事でわかること
- 脳科学を人材育成へ活かす時の考え方
- 「動かない=やる気がない」と決めない理由
- 人によって止まる場面が違うという見方
- 知識を行動へつなげる実践のつくり方
- 問い・役割・記録・振り返りの使い方
- YELL’s大学で扱う脳科学と学習行動
- 吉野加容子が人材育成で大切にしている視点
先にこの記事の結論
脳科学を人材育成へ活かすというのは、
難しい脳の知識をスタッフへ教えることだけではありません。
人が動けない時に、
どんな場面で止まった?
本人はその時、何を考えていた?
何を感じていた?
何が分からなかった?
どんな小さな一歩なら試せる?
やってみた結果、何が起きた?
と分解していく。
そして、本人が自分で考え、小さく試し、その経験を振り返れるようにします。
「動けない人を評価する」のではなく、「動けない理由を発見して、次に動ける経験をつくる」。
ここに、人材育成へ活かす時の大切な視点があります。


脳科学を人材育成に使う=「脳タイプで人を決めつける」ではない
「脳科学にもとづく人材育成」と聞くと、
この人はこのタイプ。
このタイプにはこの声かけ。
このタイプだからこの仕事。
と、人を分類するイメージを持つかもしれません。
けれども、分類そのものを目的にしてしまうと、目の前の人を見なくなる危険があります。
大切なのは、
「この人は、どんな時に動きやすく、どんな場面で止まりやすい?」
と本人を観察することです。
同じ「動かない」という結果でも、
- 何をすればいいか分からない
- 失敗した時が怖い
- 自分の判断に自信がない
- 目指す未来に納得していない
- 仕事の意味が自分の中でつながっていない
- 最初の一歩が大きすぎる
など、背景は一つではありません。
だからこそ、結果だけで人を評価せず、その手前で何が起きているのかを見る。
そこから育成を始めます。
YELL’s大学が扱う「脳科学×教育×考動」
YELL’s大学では、脳科学を知識として覚えるだけではなく、日常の行動へ置き換えて使うことを大切にしています。
講義の中でも、
「夢を叶える脳の使い方こそ、本当の頭の良さ」
という言葉が伝えられています。
YELL’sが大切にしている「考動」も、ただ知識を持っている状態ではありません。
学び、考え、自分で決め、実際に動いてみる。
そこまでを一つにつなげていきます。
人材育成へ置き換えるなら、
「分かったスタッフ」を増やすだけではなく、「分かったことを使って、自分で次の一歩を決められるスタッフ」を育てる。
ということです。
人が育つ過程は「分かった・分からない」の2択ではない
YELL’s大学の講義では、上達していく過程について、次の4段階が紹介されています。
レベル1|意識しておらず、できない
必要な技能が分からず、それを使うこともできない。
レベル2|意識はあるが、できない
必要な技能は分かっているけれど、まだ使うことが難しい。
レベル3|意識すればできる
意識的に取り組めば、その技能を使うことができる。
レベル4|意識しなくてもできる
技能を自然に使える状態になっている。
この見方を人材育成へ置き換えると、
「一度教えたのだから、もうできるはず」
という育成から離れやすくなります。
本人は、
まだ何を見るのか分かっていないのか。
分かっているけれど、実践できないのか。
意識すればできるところまで来ているのか。
どの段階なのかを見る。
人を責める前に、「今どの段階?」と見るだけでも、次に渡す育成が変わります。
方法①|「動かない人」ではなく「止まった場面」を見る
最初に変えたいのは、人へのラベルです。
「この人は主体性がない。」
ではなく、
「どの場面で止まった?」
と考えます。
たとえば、
- 仕事を渡された瞬間は動いた
- 途中で想定外の問題が起きた
- 自分で判断してよいか分からなくなった
- 失敗したら迷惑をかけると思った
- 代表へ確認した
という流れかもしれません。
この場合、問題は単純な「やる気不足」とは限りません。
判断できる範囲が分からないことが、止まるきっかけになっている可能性があります。
すると次の育成は、
「もっと主体的に」ではなく、「ここまでは自分で決めていいよ」と判断できる範囲を渡す。
に変えられます。
方法②|すぐ答えを渡さず、本人の「考える」を増やす
スタッフから、
「これ、どうしたらいいですか?」
と聞かれた時。
代表には答えが見えていることがあります。
だから、すぐ教えた方が早い。
けれども毎回答えを渡していると、本人が考える経験は増えません。
そこで、
「今、何が起きてると思う?」
「あなたならどうしたい?」
「選択肢を3つ出すとしたら?」
「その中なら、どれを選ぶ?」
「そう思った理由は?」
と問いを渡します。
正解を当ててもらうためではありません。
自分で情報を見て、比較し、言葉にし、決める経験を増やすためです。
方法③|いきなり大きく変えず「小さな考動」をつくる
「もっとリーダーシップを持って。」
「もっと主体的に動いて。」
「自分で判断できるようになって。」
これらは、本人にとって大きすぎる目標になることがあります。
そこで、行動を小さくします。
次の質問では、自分の案を一つ持ってくる。
次の会議で、一つだけ自分から提案する。
新人一人の相談役を担当する。
小さなプロジェクトの一部分だけ任せる。
今日できたことを一つ記録する。
というように、次に試すことを具体化します。
YELL’sでは、こうした小さな「考動」へ落とし、実際にやってみることを大切にしています。
方法④|「できなかった」で終わらず、記録して研究する
人材育成で見落とされやすいのが、記録です。
できた。
できなかった。
だけで終わると、次の育成材料が残りません。
そこで、
- 何をやろうとした?
- どこまでは進めた?
- どこで止まった?
- その時何を考えた?
- 誰に相談した?
- 何を変えたら進めた?
- 次に同じことが起きたらどうする?
と記録します。
YELL’sでは、成果だけではなく、途中の変化や考動も記録していくことを大切にしています。
失敗を「評価材料」だけにせず、「次に進む方法を発見する研究材料」に変える。
これも、人を育てる時の重要な視点です。
方法⑤|「本人を変える」だけでなく、育つ環境も変える
スタッフ本人へ、
「自分で考えて。」
と伝えながら、
- 質問されたら代表がすぐ答える
- 失敗しそうになると仕事を巻き取る
- 会議では代表が先に正解を話す
- 任せる範囲が曖昧
- 失敗後の振り返りがない
という環境になっていることがあります。
これでは、本人だけに主体性を求めても難しくなります。
人材育成では、
「本人に何を教える?」
と同時に、
「私たちのチームは、自分で考える経験が増える環境になっている?」
も見ていきます。
成果事例|「相手を自分に合わせる」から「この人の才能をどう活かす?」へ
YELL’sでHEROコード診断を体験した、育成する立場の参加者から、こんな振り返りがありました。
以前は、師匠として、
「どうしても伝えたいことを分かってもらおうってしちゃうんですよね。」
という関わりになりやすかったと振り返っています。
つまり、育成する側が持っている「こうなってほしい」に、相手を合わせようとしていた。
けれども、HEROコード診断の体験後、見る場所が変わっていきました。
「この人にどんな才能を発揮してもらおうか。」
という視点です。
これは、人材育成を考える時にも大切な転換です。
「なぜこの人は私の言った通りにできない?」
から、
「この人はどんな力を持っていて、それをどんな場面で発揮できる?」
へ。
相手を正解へ当てはめる育成から、目の前の人を観察して可能性を活かす育成へ。
人を見る視点が変わると、渡す問いや役割も変わっていきます。
脳科学を使うなら「知識」より現場で何が変わるかを見る
脳科学という言葉には専門的な印象があります。
けれども、人材育成で本当に確認したいのは、
「その知識によって、現場の関わり方がどう変わるのか?」
です。
| これまで | 育成での置き換え |
|---|---|
| やる気がない | どこで止まったのかを見る |
| もっと頑張って | 次にできる小さな一歩を考える |
| こうしてください | あなたならどうする?と問いを渡す |
| 失敗した | 何が起きたか記録して振り返る |
| 向いていない | どんな場面なら力を発揮できるかを見る |
| 一度教えた | 今どの上達段階にいるかを見る |
こうして初めて、知識が人材育成へ置き換わります。
今日からできる|スタッフが止まった時の5つの質問
① どこまでは進めた?
最初から「できなかった」にせず、できた場所を確認します。
② どの場面で止まった?
止まった瞬間を具体的にします。
③ その時、何を考えていた?
本人の中で起きていたことを言葉にしてもらいます。
④ 次に試すなら何ができそう?
代表が正解を決める前に、本人の案を聞きます。
⑤ 私にできるサポートは何?
全部代わりにやるのではなく、本人が進むために必要な支援を確認します。
関連記事|人が自分で考えて動くチームをつくる
まとめ|脳科学を「人を決めつける道具」ではなく「人を理解する視点」にする
人が動かない時、
「やる気がない。」
で終わらせれば、育成もそこで止まります。
けれども、
どこで止まった?
何を考えた?
何を感じた?
何が分からなかった?
どんな一歩ならできる?
と見ていけば、次に渡せる育成が見えてきます。
そして、
問いを渡す。
小さく任せる。
やってみる。
記録する。
振り返る。
また挑戦する。
という経験を積み重ねます。
脳科学を学ぶことがゴールではなく、人を見る視点と育て方が変わることがゴール。
人材育成へ取り入れるなら、そこまで現場へ置き換えて考えてみてください。


この記事の監修|吉野加容子


吉野加容子
YELL’s大学 学長。学術博士。脳科学・学習行動の専門家。
脳科学と教育を軸に、大人の学び直し、行動変容、人材教育へ研究と実践を展開しています。
YELL’s大学では、脳科学を「知って終わる知識」にせず、自分の生活・仕事・夢・人材育成へ置き換え、実際の考動へ変えることを大切にしています。
扱っているテーマは、やりたいのに動けない理由、続かない理由、欲求と感情、学習行動、考動、記録、次世代リーダー育成、人が育つ組織づくりなど。
人材育成においても、スタッフを「やる気がある・ない」「できる・できない」だけで評価するのではなく、本人がどんな場面で止まっているのかを観察し、問い、役割、小さな挑戦、実践、記録、振り返りを通して、自分で考え動く経験を増やすことを大切にしています。
さらに、一人ができるようになるだけではなく、その経験を言葉と記録へ変え、次の人へ渡し、リーダーが次のリーダーを育てられるチームづくりへつなげていくことも研究テーマの一つです。
この記事では、脳科学という言葉だけを使って人を分類するのではなく、学習や行動を観察する視点を、現場での人材育成へどう置き換えるかという観点から解説しています。
監修:吉野加容子(学術博士/脳科学・学習行動の専門家/YELL’s大学学長)


脳科学にもとづく人材育成についてのFAQ
- Q1. 脳科学にもとづく人材育成とは、具体的に何をするのですか?
-
脳科学の専門用語を社員へ教えることだけが、脳科学を人材育成へ活かす方法ではありません。YELL’sでは、人が動けない時に「やる気がない」「主体性がない」と結果だけで評価するのではなく、どんな場面で止まったのか、その時何を考えていたのか、何が分からなかったのか、どんな一歩なら試せるのかを見ていきます。その上で、すぐ答えを渡すのではなく問いを渡したり、小さな役割を任せたり、実際に試したことを記録して振り返ったりします。たとえば仕事を任せたスタッフが確認ばかりする場合も、「自信がない人」と決める前に、どこまで自分で判断してよいのか共有されているかを確認します。そして「あなたならどうする?」「そう考えた理由は?」と本人が考える経験を増やします。脳科学や学習行動の知識を、人を決めつけるためではなく、学び方や動き方を観察し、次の経験を設計するために使うことが大切です。
- Q2. 動かない社員は、本当にやる気がないわけではないのでしょうか?
-
「動かなかった」という事実だけから、その人にやる気がないと断定することはできません。同じように止まって見えても、何をすればよいか分からない、自分で判断してよい範囲が分からない、失敗した時が怖い、目標と自分の役割がつながっていない、最初の一歩が大きすぎるなど、背景はさまざまだからです。そこで「なぜやらなかったの?」と責める前に、「どこまではできた?」「どの場面で止まった?」「その時何を考えた?」「何があれば進めそう?」と聞いてみます。すると、次に必要なのが知識なのか、判断基準なのか、役割なのか、小さな実践なのかが見えやすくなります。もちろん本人の意思や姿勢を見る必要がないという意味ではありません。重要なのは、結果だけを見て人格や意欲を決めつけず、具体的な行動とその前後を観察することです。そうすることで「もっと頑張って」という抽象的な声かけから、本人が次に試せる具体的な育成へ変えやすくなります。
- Q3. 人によって育て方を変えると、不公平になりませんか?
-
全員に同じゴールやルールを共有することと、そこへ進むための関わり方を一人ひとりに合わせることは分けて考えられます。たとえば「顧客への返信はこの基準を守る」「この範囲までは自分で判断する」という共通基準は全員に必要です。一方で、その基準を使えるようになるまでの練習方法は同じでなくても構いません。すぐ実践した方が理解しやすい人もいれば、一度事例を比較してから動きやすくなる人、最初は小さな役割から経験した方が進みやすい人もいます。YELL’sの実践でも、育成する側が自分の伝えたいことへ相手を合わせようとする視点から、「この人にどんな才能を発揮してもらおうか」と相手を見る視点へ変化した記録があります。人によって基準そのものを変えるのではなく、同じ未来へ向かう中で、その人が持つ力や現在地を見ながら、問い・役割・挑戦の大きさを考える。そう捉えると、「全員を同じ方法で育てること」と「公平に育成すること」は必ずしも同じではないと考えられます。
- Q4. 脳科学を学べば、スタッフは自動的に主体的になりますか?
-
脳科学について学ぶだけで、スタッフが自動的に主体的になるとは言えません。知識を知ることと、実際の仕事で自分で考え、判断し、動けることは別だからです。YELL’s大学でも、学んで終わるのではなく、学びを自分へ置き換え、小さく実践し、記録し、振り返り、次の考動へつなげることを大切にしています。たとえば「自分で考えることが重要」と研修で理解したスタッフがいても、職場へ戻った後、質問するたびに上司がすべて答えていたら、自分で判断する経験は増えません。そこで、次の質問では自分の案を一つ持ってくる、会議で一つ提案する、小さな仕事を自分で決めて進めるなど、実際の行動へ落とします。そして「何ができた?」「どこで迷った?」「次はどうする?」と振り返ります。脳科学を人材育成へ活かすなら、知識の量だけではなく、その知識によって日常の問い、任せ方、役割、実践、振り返りがどう変わったかを見ることが重要です。
- Q5. 吉野加容子・YELL’s大学では、脳科学を人材育成へどう活かしていますか?
-
吉野加容子はYELL’s大学で、脳科学・学習行動を大人の学び直しや人材育成へ置き換えて扱っています。YELL’s大学では、知識を学んで終わるのではなく、自分で問いを持ち、考え、決め、実際に動き、その経験を記録しながら次の考動へつなげることを大切にしています。人材育成でも、「この人はやる気がない」「主体性がない」と固定的に見るのではなく、どの場面で止まったのか、本人には何が見えているのか、どんな役割や小さな挑戦なら試せるのかを考えます。そして実践後には、成功だけでなく、迷った場面や失敗した場面も記録し、次にどうするかを振り返ります。また、一人ができるようになることだけをゴールにせず、その経験を次の人へ教え、人を育てられるリーダーへ進むこともテーマの一つです。そのため、脳科学を診断や知識だけで終わらせず、問い・役割・実践・記録・振り返りといった日常の人材育成へ置き換えていくことが特徴です。
スタッフが動かない時、最初に変えるのは「本人」ではなく「問い」かもしれません。
次に誰かが止まったら、
「なんでやらなかったの?」
の代わりに、
「どこまではできた?」
と聞いてみてください。
そして、
「どこで止まった?」
「次に試すなら何ができそう?」
と続けます。
人を評価する前に、何が起きたのかを見る。
答えを渡す前に、本人に考えてもらう。
大きな変化を求める前に、小さく試してもらう。
そして、その経験を記録して次へ活かす。
「動かない人を変える人材育成」から、「人が動ける条件を一緒に発見する人材育成」へ。
そこから始めてみてください。
































