「うちの社員は主体性がない」と感じる前に、見てほしいことがあります。
社長や管理職の方から、こんな声を聞くことがあります。
「言われたことはやるけれど、自分から提案してこない」
「会議で意見を聞いても、なかなか発言が出ない」
「もっと自分で考えて動いてほしいのに、毎回指示待ちになる」
「リーダー候補だと思っている社員が、責任ある場面になると一歩引いてしまう」
「結局、社長の自分が全部判断している」
こういう状態を見ると、つい「主体性がない」「やる気が足りない」と感じてしまうかもしれません。
だけれども、本当にそうでしょうか。
もしかすると、その社員はやる気がないのではなく、まだ自分で考えて動くことに上達していないだけかもしれません。
YELL’s大学では、脳は新しいことを学習する臓器だと捉えます。
ここでいう学習とは、学校の勉強だけではありません。
新しいことを学んで、上達していくことです。
つまり、主体性も「持っている・持っていない」で終わるものではありません。
育て方によって、上達していく力として見ることができます。
こんなお悩みはありませんか?
- 社員が言われたことしかやらない
- 会議で意見を求めても、発言が出てこない
- 若手社員がいつも確認待ちになっている
- 管理職が自分の判断で部下を動かせない
- 主体性研修を受けても、現場で行動が変わらない
- 社長だけが会社の未来を考えている気がする
- 社員がもっと自分で考え、提案できる会社にしたい
この記事でわかること
- 主体性がないように見える社員の本当の状態
- やる気不足と決めつける前に見るべき脳の上達プロセス
- 主体性を育てるために必要な「自動化」の考え方
- 社長や管理職が今日からできる声かけ
- 社員が自分で考えて動く会社に変えるための育成ワーク
この記事のポイント
✅ 主体性がない社員は、やる気がないのではなく、考えて動くことがまだ上達途中かもしれません。
✅ 脳は、新しいことを学んで上達する臓器です。
✅ 上達のゴールは、意識しなくてもできる状態です。
✅ 社員に「主体的に動け」と言う前に、考えるステップを分解することが大切です。
✅ 主体性は、会社の行動量・提案量・改善力につながる未来資産です。
主体性がない社員を見ると、社長や管理職は焦ります。
なぜ自分から動かないのか。
なぜ毎回確認してくるのか。
なぜもっと先を読めないのか。
なぜ会社の未来を自分ごとにしてくれないのか。
そう感じるのは自然です。
だけれども、そこで「この社員はやる気がない」と決めつけると、育成の入り口を見失います。
主体性は、性格だけで決まるものではありません。
脳の上達プロセスから見ると、社員が自分で考えて動く力は、段階を追って育てることができます。
先に結論です
主体性がないように見える社員は、やる気がないのではなく、まだ自分で考えて動くことが自動化されていない状態かもしれません。
自動化とは、意識しなくてもできる状態のことです。
たとえば、自転車に乗ることも、最初は何を意識すればいいかわかりません。
その後、意識して練習し、少しずつできるようになり、最後にはほとんど考えなくても乗れるようになります。
仕事も同じです。
最初から、社員が自分で考え、判断し、提案し、改善し、会社の未来まで見られるわけではありません。
だから必要なのは、社員を責めることではなく、主体性が上達する育成の流れを会社の中につくることです。
主体性がない社員は、本当にやる気がないのか?
「主体性がない」と言われる社員には、いくつかのパターンがあります。
自分の考えがないように見える人。
言われるまで動かない人。
会議で黙っている人。
確認ばかりしてくる人。
失敗しそうな場面になると、一歩引く人。
社長や管理職から見ると、歯がゆいはずです。
「もっと考えてほしい」
「もっと動いてほしい」
「もっと自分の仕事として向き合ってほしい」
そう思うのは当然です。
だけれども、社員本人の中では、こういうことが起きているかもしれません。
何を考えればいいかわからない。
どこまで自分で判断していいかわからない。
勝手に動いて怒られたくない。
失敗して評価を下げたくない。
自分の意見に自信がない。
過去に提案して否定された記憶がある。
社長が見ている未来が、まだ自分には見えていない。
この状態で「主体的に動け」と言われても、社員の脳は何をすればいいかわかりません。
つまり、主体性がないように見える社員の中には、まだ考えるためのステップが育っていない人がいるのです。
大切な視点
主体性は、気合いで急に出るものではありません。
「自分で考えて動く」という行動に、脳が上達していく必要があります。
だから、社員を見た時に「やる気がない」と決める前に、
「この社員は、考えて動くプロセスのどこで止まっているのか?」
と見ることが大切です。
脳科学で見ると、主体性は「上達する力」です
YELL’s大学では、脳は「新しいことを学習する臓器」だと捉えます。
この学習とは、学校の勉強のことだけではありません。
新しいことを学び、できるようになり、上達していくことです。
そして、上達のゴールは「自動的にできる状態」です。
自動的にできる状態とは、意識しなくてもできる状態のことです。
たとえば、仕事でいうとこうです。
お客様の表情を見て、次に必要な確認が自然に浮かぶ。
会議の前に、自分なりの意見を準備できる。
社長に聞く前に、自分の仮説を一つ持てる。
現場の違和感に気づいて、改善案を出せる。
会社の未来から逆算して、今の行動を考えられる。
ここまでできる社員を見ると、社長は「主体性がある」と感じます。
だけれども、この状態は最初からあるものではありません。
上達して、少しずつ自動化されていくものです。
だから、主体性を育てたいなら、社員に「もっと主体的に」と言うだけでは足りません。
社員が自分で考えて動くためのプロセスを、小さく分解して練習する必要があります。
主体性が育つ4つの段階
ここでは、YELL’s大学で扱う上達の4段階を、社員の主体性に置き換えて整理します。
この段階の社員は、何を意識すればいいのかがわかっていません。
「自分で考えて」と言われても、何を考えればいいのかわからない状態です。
たとえば、会議で意見を求められても、どの視点で考えればいいのかがわからない。
この段階では、いきなり意見を出させるより、見るポイントを渡すことが大切です。
「お客様の困りごとは何だと思う?」
「現場で一番時間がかかっているところはどこ?」
「社長が今、一番気にしている数字は何だと思う?」
こうやって、考える入口をつくります。
この段階では、考えた方がいいことはわかっています。
主体的に動いた方がいいこともわかっています。
だけれども、実際の現場になると止まってしまいます。
たとえば、会議の前には「今日は発言しよう」と思っていたのに、いざ始まると黙ってしまう。
この段階で必要なのは、責めることではありません。
「意識できるところまで来た」と見て、次の小さな練習に進めることです。
この段階では、準備すればできるようになります。
会議前に一つ意見を書いておけば発言できる。
上司に聞く前に、自分の案を一つ持っていける。
チェックリストがあれば、自分で判断できる。
ここまで来ると、主体性の芽が出ています。
ただし、まだ意識しているので疲れます。
できる日とできない日があるのも自然です。
だから、できた時に「何がポイントだったのか」を言葉に残すことが大切です。
この段階では、考えて動くことが自然になります。
言われる前に現場の違和感に気づく。
お客様の反応から次の提案を考える。
社長に聞く前に、自分の仮説を出す。
会社の未来から逆算して、今日の行動を選ぶ。
この状態が増えると、社員は指示待ちから抜け出していきます。
社長が求めている主体性とは、この「無意識にできる」状態が増えていることだと言えます。
よくあるシチュエーション:会議で何も発言しない若手社員
たとえば、社長が月1回の全体会議で、若手社員にこう聞いたとします。
「今の現場で、何か改善した方がいいと思うことある?」
すると、社員は黙ります。
目線を下げて、ノートを見て、誰かが先に話すのを待っている。
社長から見ると、こう見えるかもしれません。
「何も考えていないのか?」
「やる気がないのか?」
「自分の会社なのに、なぜ意見がないんだ?」
だけれども、社員の中ではこうなっていることがあります。
何を言えばいいかわからない。
的外れだったら恥ずかしい。
先輩と違う意見を言っていいのかわからない。
社長の前で間違えたくない。
改善点はある気がするけれど、言葉になっていない。
つまり、意見がないのではなく、意見を出すまでのステップがまだ育っていない可能性があります。
この時、社長ができることは、こうです。
「いきなり改善案じゃなくていいよ。まず、最近“やりにくいな”と思った場面を一つ教えて」
この問いなら、社員は答えやすくなります。
改善案を出す前に、違和感を言葉にする。
そこから、次にこう聞きます。
「それが少し楽になるとしたら、何が変わるといい?」
このように、意見を出すまでの階段を小さくするのです。
主体性は、いきなり大きな提案から始まるとは限りません。
最初は、「違和感を一つ言葉にする」ことから始まります。
主体性がない社員にやりがちな3つのNG行動
社員の主体性を育てたい時、社長や管理職がやりがちな関わり方があります。
主体性という言葉は、使いやすい言葉です。
だけれども、社員からすると抽象的です。
何を見ればいいのか。
何を考えればいいのか。
どこまで自分で判断していいのか。
どう動けば主体的と言えるのか。
ここが見えないまま「主体性を持て」と言われても、社員は動けません。
必要なのは、主体性を具体的な行動に分解することです。
一度説明したから、次からできるはず。
そう思いたくなる気持ちはわかります。
だけれども、理解することと、現場で自然にできることは違います。
YELL’s大学の上達プロセスで見ると、意識できる段階と、無意識にできる段階の間には練習があります。
だから、一度説明して終わりではなく、やってみて、振り返って、もう一度やる流れが必要です。
社員が考えられない時、社長が答えを出した方が早いです。
忙しい現場では、それが必要な場面もあります。
だけれども、毎回社長が答えを出していると、社員は「考える前に聞く」ことを学んでいきます。
答えを渡す前に、一つだけ問いを挟む。
これが、社員の主体性を育てる小さな入口になります。
今日からできる「主体性を育てるオートスキルトレーニング」
主体性を育てるには、いきなり大きな責任を渡すより、まず小さく考える練習をつくることが大切です。
YELL’s大学では、上達を早める方法として、オートスキルトレーニングを扱います。
これは、やりたいことを宣言し、ステップに分解し、やってみて、感覚を言葉にし、もう一度やってみる練習です。
社員育成に置き換えるなら、こう使えます。
主体性を育てる5ステップ
- 社員に「できるようになりたいこと」を一つ宣言してもらう
- その行動を小さなステップに分解する
- 一回やってみる
- やってみて、どこがやりやすくて、どこで止まったかを言葉にする
- 気づいたポイントをもとに、もう一度やってみる
たとえば、「会議で一つ意見を出す」というテーマなら、こう分解します。
宣言:
「次の会議で、現場から見た改善点を一つ出せるようになりたい」
ステップ分解:
1. 最近やりにくいと感じた場面を一つ書く
2. それが起きている理由を一つ考える
3. 少し楽になる方法を一つ書く
4. 会議で話す一文を作る
5. 会議後に、話してみてどうだったか振り返る
振り返りの問い:
「どこまでは自分で考えられた?」
「どこで言葉に詰まった?」
「次に同じ場面が来たら、何から始める?」
「今回のポイントは何だった?」
この流れを繰り返すと、社員はただ「発言しなきゃ」と思うだけではなく、発言するまでの脳の使い方を覚えていきます。
主体性は、気持ちだけで育つものではありません。
小さく考えて、小さく動いて、振り返る。
この積み重ねで育っていきます。
社員への声かけ例
「何か意見ある?」ではなく、
「最近、少しやりにくいと感じた場面はある?」
「もっと主体的に動いて」ではなく、
「次に同じ場面が来たら、最初の一歩は何にする?」
「なんで考えないの?」ではなく、
「どこまでは自分で考えられた?」
このように問いを変えると、社員は責められている感覚ではなく、自分の脳を使う入口を持ちやすくなります。
社長が見るべきポイント:主体性は会社の未来資産です
社員の主体性は、個人の性格の問題だけではありません。
会社全体の行動量、提案量、改善力に直結します。
主体性が育っていない会社では、こういうことが起きます。
- 社長に判断が集中する
- 管理職が育たない
- 現場から改善提案が出ない
- 社員が会社の未来を自分ごとにできない
- 新しい事業や変化に対応するスピードが落ちる
- 社長だけが忙しい状態から抜け出せない
一方で、社員が自分で考えて動けるようになると、会社は変わります。
現場から提案が出る。
リーダー候補が育つ。
社長の判断負担が減る。
お客様への対応が早くなる。
会社の未来を一緒に考える人が増える。
これは、単なる研修効果ではありません。
会社の未来資産です。
一般的な主体性研修では、主体性の大切さや行動の型を学ぶことが多いです。
もちろん、それも大切です。
だけれども、YELL’s大学の脳科学では、さらにその手前にある社員がその行動を現場で使える脳の状態を見ます。
知識としてわかっていることと、現場で自然にできることは違います。
だから、主体性を育てるには、スキルを教えるだけではなく、上達のプロセスを会社の中に入れることが必要です。
今日から会社でやること
まずは、主体性がないように見える社員を一人思い浮かべてください。
その社員に対して、いきなり大きな主体性を求める必要はありません。
最初にやることは、考える入口を小さくすることです。
主体性を育てる3つの問い
- 最近、仕事で少しやりにくいと感じた場面はどこ?
- それが少し良くなるとしたら、何が変わるといい?
- 次に同じ場面が来たら、最初の一歩は何にする?
この3つは、社員に大きな正解を求める問いではありません。
社員が自分の感覚を言葉にして、次の一歩を考えるための問いです。
主体性は、いきなり会社全体を背負うことではありません。
まずは、自分の仕事の中で「気づく」「考える」「一歩動く」ことから始まります。
この小さな繰り返しが、社員の脳を育てます。

主体性がない社員を育てるFAQ
- 主体性がない社員は、やる気がないということですか?
-
必ずしもそうではありません。主体性がないように見える社員の中には、何を考えればいいのか、どこまで自分で判断していいのかが見えていない人もいます。YELL’s大学では、脳は新しいことを学んで上達する臓器だと捉えます。自分で考えて動くことも、上達する力です。やる気の有無だけで判断する前に、その社員がどの上達段階にいるのかを見ることが大切です。
- 社員に主体性を持たせるには、最初に何をすればいいですか?
-
最初にやることは、「主体的に動いて」と伝えることではありません。まず、主体性を小さな行動に分解することです。たとえば「会議で一つ意見を出す」なら、いきなり改善案を求めるのではなく、「最近やりにくいと感じた場面を一つ言葉にする」ことから始めます。考える入口を小さくすると、社員は自分で動く一歩を持ちやすくなります。
- 主体性研修を受けても現場で変わらないのはなぜですか?
-
研修で大切さを理解しても、現場で自然にできるとは限りません。YELL’s大学の上達プロセスで見ると、意識できる段階と、無意識にできる段階には差があります。理解しただけでは、まだ自動化されていないことがあります。だから、研修後に小さく実践し、振り返り、もう一度やってみる流れを作ることが必要です。
- 会議で発言しない社員には、どう声をかければいいですか?
-
いきなり「何か意見ある?」と聞くと、社員は止まりやすくなります。まずは「最近、少しやりにくいと感じた場面はある?」と聞いてみてください。改善案ではなく、違和感を言葉にするところから始めるのです。その後に「それが少し良くなるとしたら、何が変わるといい?」と聞くと、社員は自分の感覚から考えを出しやすくなります。
- 社長が全部判断してしまう会社から抜け出すには?
-
まず、社員が考える前に社長が答えを出していないかを見直すことです。忙しい時ほど、社長が答えを出した方が早く感じます。だけれども、それが続くと社員は考える前に聞くことを学んでしまいます。答えを渡す前に「あなたはどう見ている?」「一つ案を出すなら何?」と聞く時間を作ることで、社員の脳は少しずつ考えて動く方向に育ち始めます。
まとめ:主体性は、社員の中に育てることができる
主体性がない社員を見ると、社長や管理職は不安になります。
このままで会社は大丈夫なのか。
自分が全部判断し続けるのか。
リーダーは育つのか。
会社の未来を一緒につくる人材は増えるのか。
そう感じるのは自然です。
だけれども、主体性がないように見える社員を、やる気がない人として終わらせないでください。
その社員は、まだ自分で考えて動くことに上達していないだけかもしれません。
YELL’s大学では、脳は新しいことを学んで上達する臓器だと捉えます。
主体性も、上達する力です。
最初は、何を意識すればいいかわからない。
次に、意識してもできない。
その後、意識すればできるようになる。
最後に、意識しなくてもできる状態へ近づいていく。
この流れを会社の中に入れることで、社員は少しずつ変わり始めます。
社長だけが未来を考える会社から、社員が会社の未来を一緒につくる会社へ。
そのために必要なのは、社員を責めることではなく、社員の脳が育つ問いと実践を増やすことです。
最後に
今日、主体性がないように見える社員を一人思い浮かべてください。
その社員に、いきなり大きな変化を求める必要はありません。
まずは、こう聞いてみてください。
「最近、少しやりにくいと感じた場面はどこ?」
「それが少し良くなるとしたら、何が変わるといい?」
「次に同じ場面が来たら、最初の一歩は何にする?」
この小さな問いが、社員の脳を動かす入口になります。
主体性は、持っているかどうかではありません。
育てるものです。

吉野加容子(学術博士 Ph.D.)
脳科学・学習行動の研究者が監修。
大人の学び直しと行動の脳科学を専門とする研究者です。
「続かない・動けない・未来が怖い」と感じる大人に対して、脳の仕組みから“夢に向かえる脳”を育てる教育メソッドを開発。
YELL’s大学のすべての学びの科学的基盤をつくる専門家です。























